利用報告書

分子間力の精密制御を目的としたマイクロ空間の開発と新規物質材料の創製
神崎 千沙子, 山下 加笑, 沼田 宗典(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)

課題番号 :S-20-MS-3001
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :分子間力の精密制御を目的としたマイクロ空間の開発と新規物質材料の創製
Program Title (English) :Microflow channel as a novel platform for molecular manipulation
利用者名(日本語) :神崎 千沙子, 山下 加笑, 沼田 宗典
所属名(日本語) :京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Life and Environmental Science, Kyoto Prefectural University

1.概要(Summary )
本課題では,マイクロフロー空間を流通する溶液の分光測定を実施するための独自のマイクロフローチャンネルの設計・作成を行なった。これまでに,本協力研究を通して独自に作成したマイクロチャンネルを用いて,流通する溶液の直線偏光(LD)測定を実施してきた。その結果, マイクロチャンネルの断面形状が正確なスペクトル測定を実施する上で極めて重要であることが明らかとなっている。本年度は,より高精度な測定を行うために断面形状を改良したマイクロチャンネルの作成を行なった。また,マイクロチャンネルをより実践的に超分子創製のプラットフォームとして活用していくためには,複数の分岐構造を持つチャンネルを設計する必要がある。以上の2点を課題として,新たなマイクロチャンネルの作成を実施した。
2.実験(Experimental)
エッチング加工を施したガラス基板のサイズは70x30mmxt 0.7mmである。 まずこのガラス基板表面にクライオバック社製小型2源RFスパッタ装置(RSP-4-RF3×2)を用いてクロムおよび金のスパッタ成膜を行った。この基板にフォトレジスト剤のスピンコートを施し,ナノシステムソリューションズ社製マスクレス露光装置を用いてチャンネルパターンの露光を行った。露光したパターン上の金、クロムのエッチングを行った後,深さが数十μmとなるようにチャンネルパターンのガラスエッチングを行った。カバーグラス上のレジスト・金属膜を完全に除去し,卓上フライス盤を用いて溶液導入部の穴開けを行った。チャンネルパターンの確認はKLA-Tencor社製段差計を用いて行った。最後にエッチング加工したガラス基板と未加工のガラス基板の接合処理を実施した。この処理は外注して行なった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今回は異なる分岐構造を持つチャンネル3パターンを2枚のガラス基板に作成した。断面測定の結果, いずれのチャンネルも目的とする断面形状を備えていることが確認された。また, チャンネルの分岐構造もデザインした通りに加工することができた。作成した2枚のマイクロチップのうちの1枚の写真を図に示した。
チャンネル内部の平滑性を詳細に確認したところ,部分的に若干の凹凸が認められた。エッチング処理の際にできたものと考えられる。凹凸が発生した部位の数と凹凸形状から判断して, 溶液の流通を妨げるものではないと判断している。
以上の通り, チャンネル内部のin-situ分光測定を実施するための独自のマイクロチップの作成を達成することができた。本年度は作製したマイクロチャンネルを用いてin-situ分光測定を実施していく予定である。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Kanzaki, C.; Matoba, S.; Inagawa, A.; Fukuhara, G.; Okada, T.; Narushima, T.; Okamoto, H, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 579-589.
(2) 神崎千沙子・稲川有徳・福原学・岡田哲男・成島哲也・岡本裕巳・沼田宗典, 日本化学会第101春期年会, 令和3年3月22日.
6.関連特許(Patent)
なし

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