利用報告書
課題番号 :S-16-NU-0031
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :動的光散乱を用いた、メチルセルロース水溶液のミクロな粘性の評価
Program Title (English) :Microrheology of methyl cellulose solution using Dynamic Light Scattering.
利用者名(日本語) :渥美龍男1), 永野恵司2)
Username (English) :T. Atsumi1), K. Nagano2)
所属名(日本語) :1) 岐阜医療科学大学 保健科学部 放射線技術学科, 2) 愛知学院大学 歯学部
Affiliation (English) :1) Dept. of Radiological Tech., Sch. of Sci., Gifu Univ. of Med. Sci., 2) Sch. of Dentistry, Aichi Gakuin Univ.
1.概要(Summary)
液体培地中での細菌の遊泳速度は、細菌が発生する推進力と培地から受ける粘性抵抗のつり合いによって決まるため、培地の粘性に依存する。細菌の運動と粘性との関係に関する検討では、しばしば高分子ポリマーのメチルセルロース(MC)が用いられている。MCは、重合度の高いMC4000と重合度の低いMC15が用いられている。しかし、MC水溶液は非ニュートン液体とされ、従来の報告で測定されているマクロな粘性は、細菌の運動に影響するミクロな粘性と必ずしも一致しない可能性がある。そこで、細菌の運動に及ぼす粘性抵抗を正しく評価するために、細菌と同程度の大きさのポリスチレンラテックスビーズをプローブに用い、動的光散乱(DLS)により拡散係数を計測し、ミクロな粘性の算出を試みた。その結果、一部の条件を除き、ミクロな粘性を算出することが出来た。
2.実験(Experimental)
DLSの測定には、粒径測定装置 ゼータ電位・粒径測定システム(ゼータ電位、粒径・粒度分布)大塚電子(株)製ELSZ-2(名古屋大学分子・物質合成プラットフォーム:自己組織化ナノ超構造の解析・組織解析:自己組織化ナノ超構造の構造解析装置群 #47)を用いた。各サンプルにプローブとして直径100 nm、200 nm、1000 nm のポリスチレンラテックスビーズを適量添加し、ポリスチレンディスポ蛍光セル(光路1 cm)に2 mL入れ、装置にセットしてからおおよそ10分後に(粘性が高いサンプルの場合は必要に応じて30分後に)、熱平衡に達してから測定を開始し、70回積算して検出した。見かけの粒径の算出は、レーベンバーグ・マーカート法、または、キュムラント法によった。粘性の計算にはサンプルの屈折率が必要であるが、文献によると、水 n = 1.333 に対して、2 % MC4000 n = 1.336であるので、屈折率は近似的に水と同じとして扱った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
はじめに細菌の遊泳培地を用いたところ、MCを添加しない粘性の低い溶液でも検出が困難であった。これは培地由来の微粒子が多数存在し、その光散乱の影響が強いためと考えられる。そこで、水溶液で測定することにした。
試料は重合度の異なる 6 種MC15、50、100、400、1500、4000に対して、各々 0.125 %、0.25 %、0.5 %、1 %、2 % 水溶液について検討した。溶解度は重合度の上昇とともに低下し、特にMC4000の 2 % 水溶液は極めて粘調なため、試料調整には溶解自体に時間を要するだけでなく、気泡の発生の問題が大きく、慎重に取り扱う必要があった。また、MC400、1500、4000の 2 % 水溶液では、プローブを単分散させることが困難で、再現性のある測定値が得られなかった。それ以外の条件ではプローブを単分散させることが出来、測定出来た。また、プローブサイズによる粘性の違いは認められなかった。現在、取得した測定データの整理、詳細な解析を行っており、必要に応じて、追加でDLSを測定する予定である。また、測定の困難であった培地のミクロな粘性測定も再度検討したい。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞
技術的支援を頂きました、名古屋大学大学院工学研究科(名古屋大学分子・物質合成プラットフォーム事務局)の伊藤始氏に感謝いたします。この研究はJSPS科研費 JP25462880の助成を受けたものです。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







