利用報告書

化学酵素合成法によるポリユビキチン鎖の調製
Methanee Hiranyakorn1),2), 椴山儀恵1),2),谷中冴子1),2),3),4), 矢木真穂1),2),3),4), 佐藤匡史2), 加藤晃一1),2),3),4)(1) 総合研究大学院大学物理科学研究科, 2) 分子科学研究所生命・錯体分子科学研究領域, 3) 生命創成探究センター, 4) 名古屋市立大学大学院薬学研究科)

課題番号 :S-20-MS-0032
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :化学酵素合成法によるポリユビキチン鎖の調製
Program Title (English) :Preparation of polyubiquitin chain by chemoenzymatic synthesis
利用者名(日本語) :Methanee Hiranyakorn1),2), 椴山儀恵1),2),谷中冴子1),2),3),4), 矢木真穂1),2),3),4),
佐藤匡史2), 加藤晃一1),2),3),4)
Username (English) :M. Hiranyakorn1),2), N. Momiyama1),2), S. Yanaka1),2),3),4), M. Yagi-Utsumi1),2),3),4),
T. Satoh4), K. Kato1),2),3),4)
所属名(日本語) :1) 総合研究大学院大学物理科学研究科, 2) 分子科学研究所生命・錯体分子科学
研究領域, 3) 生命創成探究センター, 4) 名古屋市立大学大学院薬学研究科
Affiliation (English) :1) School of Physical Science, SOKENDAI, 2) Life and Coordination-Complex
Molecular Science, IMS, 3) ExCELLS, 4) Graduate School of Pharmaceutical
Sciences, Nagoya City University

1.概要(Summary)
ユビキチン(Ub)鎖の量子ビーム溶液散乱やNMR分光法による動的構造解析を実施するためには大量の試料が必要となる。従来の手法に則ったUb鎖の作成方法においては、酵素合成法により、Ub一つ一つをつなぎ合わせる反応によって長鎖Ubを取得しており、効率的にUb鎖を得ることが難しかった。そこで本研究では2つのUbがつながったダイUbを最小ユニットに、それらのユニットを化学合成法と酵素合成法を組み合わせることで効率的に連結させる調製法を検討した。これらの反応により得られたダイおよびテトラUbを用いてNMR分光法による計測を実施した。

2.実験(Experimental)
本研究では野生型Ubに加えて、C末端Glyカルボキシル活性基をHisタグで保護したもの、Lys48をCysに変異し、側鎖アミノ活性基を保護したK48C変異体を使用した。また、K48C変異体は、化学合成法により調製したエチレンイミンを用い、チオエーテル構造を有する人工型のチアリジンに活性化した。これらの人工型Ubを用いて、チアリジンを含む人工型イソペプチド結合を介して連結させたダイUbを調製した。また、天然型ペプチド結合を介して連結させたダイUb同士を、チアリジンリンカーで連結させたセミ人工型テトラUbを調製した。NMRによる構造解析にあたり、試料は15N標識を施したものを用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
チアリジンリンカーを含む人工型ダイUbと天然型ダイUbの比較したところ、人工リンカーダイUbの方が天然型に比べて、Ile44パッチの露出度が小さい閉構造の割合が増加するのがわかった。さらに、セミ人工型テトラUbの調製では、野生型を用いた酵素合成法のみを用いた結果と比較して、約1.5倍程度収率が上がった。また予備的であるがNMR解析の結果から、セミ人工型テトラUbでは天然型のものと比較して、パートナー分子との相互作用部位であるIle44パッチの露出度の割合や緩和特性に違いがある可能性が見えてきた。

4.その他・特記事項(Others)
【用語説明】
※ユビキチン(ubiquitin, Ub): アミノ酸76 個からなる小さなタンパク質で、酵母からヒトにいたるまで真核細胞に普遍的に存在している。N末端および7つのリジン残基と別のユビキチンのC末端のグリシンがアミド結合を作り、ポリマーを形成する。結合に使われるリジン残基の違いによって多様な機能を発現する。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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