利用報告書

南極宇宙塵のFE-SEM-EDSによる表面組織観察と組成分析
上椙真之1),伊藤元雄2)、大東琢治3)、上杉健太朗1)、山口亮4)、今榮直也4)、矢田達5)、安部正真5)、唐牛譲5)、富岡尚敬2)
1)高輝度光科学研究センター, 2)海洋研究開発機構, 3) 分子科学研究所, 4) 国立極地研究所, 5)宇宙航空研究開発機構

課題番号 :S-17-MS-1047
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :南極宇宙塵のFE-SEM-EDSによる表面組織観察と組成分析
利用者名(日本語) :上椙真之1),伊藤元雄2)、大東琢治3)、上杉健太朗1)、山口亮4)、今榮直也4)、矢田達5)、安部正真5)、唐牛譲5)、富岡尚敬2)
所属名(日本語) :1)高輝度光科学研究センター, 2)海洋研究開発機構, 3) 分子科学研究所, 4) 国立極地研究所, 5)宇宙航空研究開発機構

1.概要(Summary )
直径1mm以下の宇宙塵は地球に飛来している宇宙物質の質量の大半を占めることが、これまでの研究から示唆されている。近年、宇宙塵の中でも比較的大気圏突入時の加熱の少ないものが南極の氷床、及び雪の中から見つかっており、これらの宇宙塵の中には有機物などの揮発性元素を隕石以上の割合で含んでいる物が見つかっている。宇宙塵の化学組成、鉱物組成からは地上の隕石、特に炭素質コンドライトとの関連が示唆されているが、地球に飛来する隕石のうち、8割近くを占める普通コンドライトとの関連を示す物が非常に少ない。
このような、有機物の存在量、及び隕石との組成の違いから、宇宙塵の母天体は隕石ではなく、彗星など、別の供給源が存在する可能性がある。これらを解明するためには、宇宙塵に含まれる有機物中の元素の同位体比を調べ、Wild2彗星から回収された塵などと比較する必要がある。
 本研究では、複数の分析手法を組み合わせてこの有機物中の同位体比を出来るだけ多くの試料から得ることを目的としている。本研究ではまず、非破壊分析を組み合わせて、有機物が含まれているかどうかをあらかじめ選別し、有望な試料を抽出してから、試料加工、NanoSIMSなどの同位体比分析を実施する。
2.実験(Experimental)
本研究では分子科学研究所に設置されたSU6600と、FlatQuad EDSを使用し、試料の表面の微細組織、及び組成を観察する。
試料は全部で5つで、このうち、事前に行われた放射光CTの結果から、有機物を含む可能性のある、非溶融組織を示す可能性のある物は3つである。この3つの試料の、Cを含む組成分析を行い、その組成マップから、内部鉱物組織と底に含まれる元素の分布を得ることを目的とする。
 試料は3mmx15mmのロッド上に、グラファイトカーボンのホルダで固定されている。過去の予備実験からこのグラファイトカーボンが分析に影響を与えないことは確認済みである。ロッドは、申請者が用意するM6ネジで固定可能なロッドホルダに固定する事で、日立製の試料ホルダに装着が可能である。
 分析は高真空環境で、1-5kVの加速電圧での、元素マッピングを行う。元素はC, Mg, Fe, Si, Ca, Na, Al, Sを調べる。
3.結果と考察(Results and Discussion)

図は宇宙塵表面の炭素のマッピングの例である。この結果から、炭素は微小な粒子状で存在することがわかった。しかし、その分子構造はまだわからないため、今後XANESなど、その他の手法を用いて詳細に調べる予定である

4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Uesugi et al.  Hayabusa 2017 : 5th Symposium of Solar System Materials第5回 宇宙物質科学シンポジウム, 平成○○年○○月○○日
6.関連特許(Patent)
なし

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