利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1076
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :双安定性を示す分子性伝導体の極低温構造解析
Program Title (English) :Crystal structure analysis of a bistable molecular conductor at very low temperature
利用者名(日本語) :高橋一志,村田優
Username (English) :K. Takahashi, S. Murata
所属名(日本語) :神戸大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Kobe University
1.概要(Summary )
これまで申請者はスピンクロスオーバー現象により電気伝導性や磁性を制御することを成功した複合機能性スピンクロスオーバー錯体の開発を行ってきた。本研究では100 K付近に温度ヒステリシスを伴う電気伝導性ならびにスピンクロスオーバー転移を示すことが示唆されている新規分子性導体の伝導性と磁性とのカップリングメカニズムを明らかにすることを目的とした。このためには転移温度以下での単結晶構造解析が必要であるが、100 K以下という温度は窒素ガス吹き付けタイプの冷凍機では到達することができない温度領域である。そこで分子研のミクロ単結晶/Rigaku 4176F07とヘリウム冷凍機を組み合わせたシステムを用い、室温から極低温まで転移温度をまたいだ温度領域での単結晶X線構造解析の検討を行った。さらに、本研究の対象となる錯体の磁化率に関しても再現性を確認する。
2.実験(Experimental)
スピンクロスオーバー伝導体の原料となる1:1錯体を複分解反応で合成し、得られた錯体をアセトニトリル溶液中定電位電解することにより黒色針状晶として伝導性スピンクロスオーバー錯体を得た。磁化測定はMPMS-XL7を用いて行い、ミクロ単結晶/Rigaku 4176F07とヘリウム冷凍機を組み合わせたシステムを用い単結晶X線構造解析の温度変化を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今回のスピンクロスオーバー伝導体は、1:1錯体の飽和アセトニトリル溶液を1週間程度定電位電解することで白金電極上に黒色針状晶として析出した。磁化測定を行ったところ、以前のスピンクロスオーバー転移を再現することがわかった。予備測定として窒素ガス吹き付けにより単結晶X線構造解析を250 Kで行ったところ、以前の構造解析によるセルパラメーターと一致し、構造精密化の結果R = 8.06%であった。次に同一単結晶を用いスピンクロスオーバー転移直上である160 Kまで温度を下げ再度回折強度の収集を行ったところ、構造精密化の結果、R = 12.88%となり。通常温度を下げることにより構造精密化の結果は良くなるはずであるが、今回の結果はそれに反する結果である。同一バッチの別の単結晶を用い神戸大学のX線回折装置で測定したところ、温度の低下に伴いR値は若干上昇するが、これは回折点数が増えることによるR値上昇であり、今回の様な大幅なR値の上昇は認められなかった。このように吹き付け型冷凍機の気流の軸とX線回折装置の軸との関係が正しくないことが示唆されるため、今後、各軸の調整後、標準的な単結晶を用いて窒素ガス吹き付けの最低温での構造解析を行い、確認を取った後にスピンクロスオーバー伝導体の構造解析を行う予定である。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は科研費基盤研究(C)25410068 により行われた研究である。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







