利用報告書

固体NMRを用いたセリア結晶中における水素内在調査
松川健
茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター

課題番号                            :S-17-TU-0012

利用形態                            :技術代行

利用課題名(日本語)          :固体NMRを用いたセリア結晶中における水素内在調査

ProgramTitle(English)     :Investigation of incorporation of hydrogen in ceria by using solid NMR

利用者名(日本語)          :松川健

Username(English)          :T. Matsukawa

所属名(日本語)                 :茨城大学フロンティア応用原子科学研究センター

Affiliation (English)         :ifrc, Ibaraki University

検索キーワード                 :酸化物, 水素, 固体NMR

 

 

1.概要(Summary

セリア(CeO2)は、CO, NOx, HCの除去などに応用されている触媒である。セリアは、酸化還元により酸素を放出・吸蔵する。その還元構造はCeO2-x(0≦x≦0.5)である。さらに、セリア結晶の高温条件下での水素還元の特性が広く研究されている。水素によりCeがCe →Ceに還元され、酸素欠損が生じる。一方で、計算によりHCeO2(Ce →Ce)といった水素含有物構造も示唆されている(参考文献:1)。表面科学の研究分野で、セリア表面1層分において、水酸基を形成することも実験的に確認されている(参考文献:2)。しかしながら、高温水素雰囲気中でのセリアのバルク構造ははっきりしない。

一般的に、触媒反応は速度論的に進行し、高温条件下での恒温保持時間に依存した構造が示唆される。最近、我々の研究において短時間(30分)保持時においてセリアは異なる副相を形成することが分かった。高温水素雰囲気中において、中性子回折を用いて酸水酸化物構造CeO2Hy(0≦y≦1)を形成していることを見出した(参考文献:3)。そこで本研究課題では、さらなる酸水酸化物構造実験的確証を得るため、高温水素雰囲気において、短時間保持時間のセリアを作製し、水素含有物の存在の有無を調査した。

 

2.実験(Experimental

ガス制御可能な赤外炉を用いて3%H2/N2ガス雰囲気(流量: 50 ml/min)でセリアの還元を行った。この時、800°Cにおいて、30分恒温保持した。

短時間恒温保持セリアは、東北大学ナノテク融合技術支援センターが管理・運営する800 MHz NMR装置(JEOL製JNM-ECA800)を用いて、固体1H-NMR実験を行った。測定温度は室温である。

3.結果と考察(Results and Discussion

30分恒温保持した白色セリアは、室温冷却して大気暴露後青色に変化していた。青色セリアについて固体1H-NMRを測定した。比較として一般試薬セリア(白色)と比較した。白色セリアは0-10 ppmの領域において吸着している水由来のプロトンピークを観測した。一方、青色セリアは高温で水分が消失し、かつOH由来と思われるプロトンのシグナルを1.33ppm付近に観測した(図1)。水素ガスがセリアと反応して酸水酸化物が形成されたためと考えているが、さらなる詳細な評価が必要である。

4.その他・特記事項(Others

本実験は、東北大学巨大分子解析研究センターの權垠相先生及び吉田慎一朗氏のご助力を得ています。

参考文献

  1. Sohlgerg, et al., J. Am. Chem. Soc.2001, 123, 6609.
  2. Chen, et al., J. Phys. Chem. C2013, 117, 5800.
  3. Matsukawa,et al., CrystEngComm2018, 20, 155.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation

なし。

6.関連特許(Patentなし。

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