利用報告書
課題番号 :S-20-NM-0009
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :塗装木材中における塗料浸透の解析
Program Title (English) :Analysis of wood surfaces treated with wood preservative coatings
利用者名(日本語) :神林 徹
Username (English) :T. Kanbayashi
所属名(日本語) :(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
Affiliation (English) :Forest Research and Management Organization
1.概要(Summary )
木材を屋外で長期間利用するには、木材表面に塗装等を施し、気象劣化や生物汚染から保護する必要がある。木材保護塗料の耐候性能には、塗料の塗布量や塗膜の隠蔽度が大きく影響することが知られている。しかし、塗料成分の微視的な分布とその影響に関しては、未解明な点が多い。本研究では、木材保護塗料塗りにおける木材中での塗料成分の分布について、顕微ラマン分光法により細胞レベルで評価することを試みた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
高速レーザーラマン顕微鏡
【実験方法】
スギ(Cryptomeria japonica D. Don)辺材から試験体(140 mm(L)×25 mm(R)×9 mm(T))を切り出して自然乾燥した後、クリア系の油性ウレタン樹脂塗料をメーカー推奨の塗りつけ回数に従って刷毛で塗装した。2週間以上静置して塗料を十分に乾燥させた試験体から小片(10 mm(L)×5 mm(R)×5 mm(T))を切り出し、ミクロトームにより塗装表面を含む厚さ15 µmの薄切片を作製した。これを高速レーザーラマン顕微鏡により、スポット径が約0.7 µmとなる条件で分析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に、塗装試験体から取得した塗装断面の光学顕微鏡像(a)および同一視野におけるラマン像(b-e)を示す。塗装面から1細胞目では下塗り塗料が細胞内腔へ完全に充填されている部分が多く見られたが、内腔表面に薄い層を形成するのみの部分も見られた。上塗り塗料と中塗り塗料は成分が類似していたため、同一のバンドを用いてマッピングを試みた結果、塗膜/塗膜界面に僅かなラマン強度の差が生じたことで上塗り層と中塗り層を区別することができた。中塗り塗料は表層のみに分布して厚い塗膜を形成しており、下塗り塗膜が中塗り塗料の素地への浸透を防ぐ役割を果たしていると推測される。なお、艶消し剤は表面付近に不均一に分布しており、海島構造をとることが示された。
4.その他・特記事項(Others)
高速レーザーラマン顕微鏡の利用にあたり李香蘭氏、竹村太郎氏の支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)神林徹,石川敦子,松永正弘,小林正彦,片岡厚,第36回日本木材保存協会年次大会,令和2年10月28日.(ベストポスター賞)
(2)神林徹,松永正弘,小林正彦,日本木材加工技術協会第38回年次大会,令和2年10月.
6.関連特許(Patent)
なし。