利用報告書

多元化合物半導体ナノ粒子の光学特性および構造評価
濱中泰(1), 藤木光(1),市江佑太(1),角谷勇輔(1),岸田和磨(1),葛谷俊博(2)(名古屋工業大学大学院工学研究科(1),室蘭工業大学(2))

課題番号 :S-20-MS-1011
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :多元化合物半導体ナノ粒子の光学特性および構造評価
Program Title (English) :Spectroscopic and structural analyzes of multinary compound semiconductor nanoparticles
利用者名(日本語) :濱中 泰(1), 藤木 光(1),市江佑太(1),角谷勇輔(1),岸田和磨(1),葛谷俊博(2)
Username (English) :Y.Hamanaka(1), H.Fujiki(1), Y.Ichie(1), Y.Sumiya(1), K.Kishida(1), T.Kuzuya(2)
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科(1),室蘭工業大学(2)
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology(1), Muroran Institute of Technology(2)

1.概要(Summary )
a. 前年度に引き続き,AgInS2ナノ粒子の発光特性に及ぼす表面配位子交換の効果を調査した。
b. ZnSナノ粒子にAgとInをドープし,ドープ量に対応した光学特性の変化を調査した。また,ラマン分光により結合の交換が検出できないかを確認した。
c. Cu(GaIn)S2ナノ粒子に対して,ラマン分光を使って,Ga/In比の変化に伴う結晶構造変化を調査した。また,共鳴ラマンを利用し電子構造の変化を調査した。
d. ITOナノ粒子の近赤外局在プラズモン共鳴における3次非線形光学特性を調査した。
2.実験(Experimental)
a. Horiba SPEX Fluorolog 3-21により,配位子交換前後の発光スペクトルと発光励起スペクトルを測定した。また吸収スペクトルをShimadzu UV3600 Plusを使って測定した。
b. 前記a.と同じ装置を使って,ドープ濃度の異なるナノ粒子の発光・発光励起・吸収スペクトルを測定した。また,RENISHAW in Via Reflexを用いてラマンスペクトルを測定した。
c. RENISHAW in Via Reflexを用いて,組成比の異なるナノ粒子のラマンスペクトルを測定した。
d. 光源としてピコ秒パルスレーザーシステムSpectra Physics-Quantronix Millenia-Tsunami-TITAN-TOPASを利用し,自作の光学系を使って非線形吸収効果の測定を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
a. 配位子交換前には、発光スペクトルは幅広い形状であったが,ホスフィン系配位子に交換すると,鋭いスペクトルに変化した。配位子交換によってこのようなバンド端発光を示す3元カルコパイライト系半導体ナノ粒子を実現することに,初めて成功した。
b. AgとInはZnサイトに収容される。Znサイトの半分をAgとInで置換すると,発光量子効率が47 %にまで上昇した。発光強度の置換量依存性より,発光にはAgとInの両方が関与した発光機構が示唆された。基板の信号に妨害され正確なラマンスペクトルは得られなかった。
c. Ga/In組成比に応じて特定のラマンバンドの強度比が変化した。これはバンドギャップの変化に伴う共鳴ラマン効果の有無を反映した結果であり,電子構造の変化を検出することができた。また,組成に応じて異なる2種類のラマンスペクトルが観測され,正方晶から直方晶に変化することがわかった。
d. ITOナノ粒子の局在プラズモン共鳴による吸収ピークは1600 nm付近の波長域に存在する。この波長にレーザー光を合わせて非線形吸収係数の測定を試みたが,レーザー出力の時間的な揺らぎが大きく,信頼できるデータが得られなかった。
4.その他・特記事項(Others)
蛍光・吸収分光装置とピコ秒レーザー装置の利用にあたっては上田正氏にご支援をいただいた。ラマン分光装置の利用にあたっては売市幹大氏よりご指導を受けた。両氏のご協力に深く感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) A. Hirase, Y. Hamanaka, and T. Kuzuya, J. Phys. Chem. Lett. Vol.11(2020)p.p.3969-3974.
(2) 平瀬明光,濱中 泰,葛谷俊博,第81回応用物理学会秋季学術講演会,令和2年9月8日.
(3) 藤木 光,Chen Shijia,濱中 泰,葛谷俊博,第68回応用物理学会春季学術講演会,令和3年3月17日.
6.関連特許(Patent)
なし

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