利用報告書

多光子励起フォトルミネッセンス法によるダイヤモンド貫通転位の伝搬挙動解析
大曲 新矢
国立研究開発法人産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター

課題番号                  :S-19-NU-0002

利用形態                  :機器利用

利用課題名(日本語)       :多光子励起フォトルミネッセンス法によるダイヤモンド貫通転位の伝搬挙動解析

Program Title (English)         :Propagation behavior of threading dislocation in diamond by multi-photon-excited photoluminescence imaging

利用者名(日本語)      :大曲 新矢

Username (English)            :Shinya Ohmagari

所属名(日本語)        :国立研究開発法人産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター

Affiliation (English)           :Advanced Power Electronics Research Center, AIST

 

 

1.概要(Summary )

ダイヤモンドは次々世代の超低損失パワーデバイス材料として期待されているが,材料物性値より予測される究極のデバイス性能は未だ実証されていない.材料ポテンシャルを極限まで引き出すために,結晶の高品質・低転位化は重要である.

ダイヤモンド結晶中の欠陥構造は,X線トポグラフィ,カソードルミネッセンス (CL),エッチピット法で評価可能である.しかしこれらの手法は,基板の厚み方向 (結晶成長方向) への分解能が乏しく,3次元的な転位の伝搬挙動を評価することは難しい.最近,SiC,GaNでは二光子吸収フォトルミネッセンス (2PPL) 法による貫通転位の可視化が報告されており,バンド端発光のダークスポット (転位近傍のキャリア再結合に起因) を評価することで,転位の3次元イメージングに成功している.ダイヤモンドは5.5 eV (225 nm) のワイドバンドギャップを有するため,バンド端励起には短波長レーザーを組み込んだ光学系構築が必要である.一方,ダイヤモンドにおいては,転位に由来したBand-A発光が2.9 eV (430 nm) 近傍に観測されることから,2PPL法で欠陥準位を励起し,転位を直接イメージングできる可能性がある.今回我々は,高い転位密度106-108 cm-2を有するモザイクウェハやヘテロ基板を例に,ダイヤモンド結晶欠陥の可視化を試みた.

 

2.実験(Experimental)

図1(a)に2PPL法 (高速多光子共焦点レーザー顕微鏡: Nikon A1MP+ ナノバイオ分子合成・超解像解析評価システム) の測定概略図を示す.波長700 nmのTi: Sapphireレーザー光をサンプル表面に集光し,X-YスキャナとピエゾZステージにより画像を取得した.サンプル表面でのレーザー強度は10-20 mWであった.各ピクセルの光強度は,バンドパスフィルターを通じてGaAsP検出器で記録した.観測領域はX: 255 mm,Y: 255 mm,Z (深さ): 116 mm,画像取得時間は約5分であった.

図1(a) 2PPL法の測定概略図.(b) モザイクウェハ境界部のBand-A発光3次元イメージング像.

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

図1(b)にモザイクウェハ接合部のBand-A発光像を示す.結晶の不連続性に起因するモザイク接合部の複雑な欠陥構造を,3次元的にイメージングすることに成功した.Band-A発光の深さ方向分布は非連続であり,1本の繋がった転位線としては観測されなかった.今後,透過型電子顕微鏡等による微細構造解析を併用して,Band-A発光と結晶欠陥の相関を評価する.

 

4.その他・特記事項(Others)

なし

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) S. Ohmagari et al., Phys. Stat. Solid. A, 1900498 (2019).

 

6.関連特許(Patent)

なし

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