利用報告書
課題番号 :S-15-MS-1006
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :多周波EPR法を用いた光合成酸素発生系高酸化状態の解析
Program Title (English) :High spin state of oxygen evolving complex investigated by multi-frequency EPR利用者名(日本語) :三野広幸1),長嶋宏樹1),古川貢2),秋田総理3),中島芳樹3) ,浅田瑞枝1) ,酒井貴弘1)
Username (English) :H. Mino1), H. Nagashima1), K. Furukawa2), S. Akita3), Y Nakajima3), M. Asada1), T. Sakai 1)
所属名(日本語) :1)名古屋大学大学院, 2)新潟大学 機器分析センター
3) 岡山大学大学院自然科学研究科
Affiliation (English) :1) Grad. School of Sci, Nagoya Univ.,2) Fac. of Sci., Niigata
3) Grad. School of Natural Sci. and Tech., Okayama University
1.概要(Summary )
光合成反応は光エネルギーを化学エネルギーに変換する多くの反応からなる過程である。なかでも光合成の酸素発生機構は光合成研究における最大の謎とされ、長年多くの研究が行われてきた。 最近、この酸素発生反応の研究において大きなブレークスルーがあった。岡山大学の沈のグループにより酸素発生を行う光化学系Ⅱタンパク質複合体のX線結晶構造解析が1.9Åの分解能でなされた(Umena et al. nature 2011)。しかし、反応機構はまだわかっていない。 酸素発生機構というのは4光子、5つの中間状態(S0 からS4)の絡む反応であり、プロトンの放出や構造変化を伴いながら反応が進行する。 結晶構造解析で明らかになった構造はそのうち最も安定な中間状態(S1 状態)であり、その構造がどのように変化して酸素発生を導くのかは依然謎である。 特に酸素発生時のクラスターの構造変化(S3⇒S0)は最重要である。 S3 状態については現在でもマンガンの価数などの論争が続いており状態が明らかになっていない。 基本となるS1 状態での構造の明らかになった現在、藍藻由来の光化学系Ⅱおよびその結晶による解析を進め、酸素発生反応を解明する。
2.実験(Experimental)
酸素発生系マンガンクラスターは異なる酸化状態(S0-S4)を持ち、高酸化状態であるS3 状態での光反応において酸素分子を生成する。 S3 状態は整数スピンであり、X-bandでは低磁場でのみ観測可能であるが、高周波であるW-band ESR を用いることにより得られるEPR信号から詳細な構造情報が得られることが期待
できる。 更に光化学系Ⅱの結晶を用いることによってS3状態でのマンガンの価数および配位子の情報を引き出すことが可能と考えられる。 また、光化学系Ⅱの結晶は非常に小さくスピン量も少ないためW-band でのみ測定が可能である。
3.結果と考察(Results and Discussion)
本年度、光化学系Ⅱ溶液試料を用いてW-band ESR (E580)を用いてS3状態の検出に成功した。そして、最適な測定条件および光照射の条件をみいだした。そして、結晶測定へと進めている。しかし、装置に不具合が生じたため、それ以後の実験はできていない。装置の修理に時間がかかっており、それを待っているのが現状である。
E680機はQ-bandパルスESRも装備されており、主にQ-bandを用いて別方面からも実験を進めている。 現在、パルスENDORによりマンガン由来の信号の検出に成功し新たな知見を得ている。Q-bandに関しても装置の不具合が頻繁におこっており、これらの実験結果の評価は次年度に持ち越しとしたい。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







