利用報告書

多周波ESR法による祖先型光合成反応中心の反応解析
武藤梨沙1),三野広幸2),佃野弘幸2),寺島尚貴2)
1) 福岡大学理学部 2) 名古屋大学大学院理学研究科

課題番号 :S -16-MS-1014
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :多周波ESR法による祖先型光合成反応中心の反応解析
Program Title (English) :Multiple Frequency ESR analysis of Type1 Reaction Center
利用者名(日本語) :武藤梨沙1),三野広幸2),佃野弘幸2),寺島尚貴2),
Username (English) :R. Mutoh1), H. Mino2), H. Tsukuno2), N. Terashima2),
所属名(日本語) :1) 福岡大学理学部 2) 名古屋大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Fucalty of Science, Fukuoka University 2) Graduate School of Science, Nagoya University.

1.概要(Summary )
光合成反応中心(RC)は太陽光エネルギーを電気化学エネルギーに変換する膜タンパク質である。緑色光合成細菌へリオバクテリアRC(hRC)の電子伝達は、スペシャルペアクロロフィルP800が光によって励起された後、補欠分子(クロロフィルA0やキノンA1)と鉄硫黄クラスターFXに電子が流れる。これまでに構造の明らかになっている植物やシアノバクテリアのRCとhRCを比べると、hRC中でのクロロフィルからキノンへの電子伝達速度は他のRC中よりも1桁以上遅く、構造の違いが示唆されている。そこで本研究では、高周波ESRを用いて、hRC単結晶のESRスペクトルを測定し分子配向と電子移動を明らかにしようと試みた。

2.実験(Experimental)
Bruker E680(W-band ESR)装置を用いて、hRC結晶を15度ずつ回転させて測定を行った。その結果、スペシャルクロロフィルペアP800の信号を観測した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
昨年度は、溶液状態のhRCを用いてP800の信号を観測するための条件検討を行った。hRCは閃光照射によるRCクロロフィルP800と鉄硫黄センターFXとの間でラジカル対P800+FX-がスピン分極する。また、光照射条件を調整することでキノン分子(A1)の還元を行い、ESRの測定が可能になる。光ファイバーでパルスレーザー照射を行うことにより、W-band ESRを用いて高感度でP800+A1-スピン分極を得るための足掛かりとした。今年度は、hRC結晶を用いて実験を行った。その結果、溶液状態と同じくP800の信号を得た(Fig. 1)。結晶を15度ずつ回転させ、同じく測定を行ったが、角度による差はあまりみられなかった。これは結晶を大きくすること、異なった結晶系を用いて測定するなどで解決できるのではないかと考えている。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 佃野弘幸、武藤梨沙、栗栖源嗣、大岡宏造、三野広幸、第55回電子スピンサイエンス学会年会(SEST2016)、2016年11月11日

6.関連特許(Patent)
なし

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