利用報告書

多孔性フラーレンポリマーの解析
西原 洋知
東北大学多元物質科学研究所

課題番号 :S-16-TU-0005
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :多孔性フラーレンポリマーの解析
Program Title (English) :Analysis of porous fullerene polymer
利用者名(日本語) :西原 洋知
Username (English) :Hirotomo Nishihara
所属名(日本語) :東北大学多元物質科学研究所
Affiliation (English) :Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University

1.概要(Summary)
フラーレンC60の一分子の比表面積は2625 m2/gにも達する。しかし、C60粉末の比表面積をガス吸着法で測定しても、実際にはほぼ0 m2/gである。これは、C60が密なfcc結晶を形成し、分子の表面が殆ど結晶内部に埋没しているためである。本申請者らは、C60を小分子で架橋した多孔性フラーレンポリマーの合成に成功しており、比表面積は600~700 m2/gに達する。得られたポリマーはフラーレンに由来するラジカル捕捉能や電子受容特性を示すため、化粧品、蓄電デバイス、電気化学的還元触媒などへの応用が期待できる。今回は、フラーレンポリマーを固体1H-NMRおよび13C-NMRで分析することにより、ポリマーの架橋構造の解析を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
JEOL JNM-ECA800
【実験方法】
試料は外径2.5 mmのジルコニア製ローターに充填した。13C CP-MAS NMRを以下の条件で実施した; 回転速度30 kHz、待ち時間1 s、接触時間3 ms、90°パルス幅2.43 m、2048回積算、TPPMによりデカップリング。外部標準としてアダマンタンを用い、CH2由来のピークが29.5 ppmになるよう補正した。1H MAS NMRは以下の条件で実施した; 回転数30kHz、外部標準(アダマンタン)のピークが1.91 ppmになるよう補正した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1にフラーレンポリマーの13C CP-MAS NMRスペクトルを示す。38 ppm付近にN-CH3由来のピーク、60 ~ 80 ppm付近にピロリジン環構造の形成によるC60のsp3炭素のピーク、120 ~ 160 ppm付近にC60およびベンゼン環由来のピークが確認できた。また、1H MAS NMRにおいては、ピロリジン環由来のN-CH3、–CH2–、–CH–に由来すると考えられるブロードなピークが0 ~ 6.0 ppmに現れ、6.0 ~ 9.0 ppmにはベンゼン環のH由来のブロードなピークが現れた。これら、二つのピークの面積を概算したところ、その比は(ピロリジン環由来) : (ベンゼン環由来) = 2.8 : 1.0となり、理論値(3 : 1)と近い値をとった。以上の結果から、今回の測定により目的通りのポリマーが得られていることが示唆された。

Fig. 1. 13C CP-MAS NMR spectrum.

4.その他・特記事項(Others)
謝辞本研究はJSTさきがけ、人・環境と物質をつなぐイノベーション創出ダイナミック・アライアンスの支援を受け実施いたしました。関係各位に深く御礼申し上げます。
共同研究者 道信剛志(東京工業大学物質理工学院)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) なし
6.関連特許(Patent)
なし

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