利用報告書
課題番号 :S-16-SH-0019
利用形態 :共同研究型利用 (1年間)
利用課題名(日本語) :多層グラフェンのコンポジット材料の高機能化
Program Title (English) :Improvement of composite material of multilayer graphene
利用者名(日本語) 鈴木慎悟
Username (English) :Shingo Suzuki
所属名(日本語) :株式会社アイテック
Affiliation (English) :ITEC Co., Ltd.
1.概要(Summary )
電気伝導性や熱伝導性を向上させる目的で、多層グラフェンを樹脂に混練した場合、その伝導性と混練性は相反する。このようなコンポジット材料の樹脂中における構造や、多層グラフェンそのものの特性、そして異方性などのさまざまな要因を検討することにより、高機能化や品質の安定化に繋がる手法を確立したい。
2.実験(Experimental)
アイテック製の多層グラフェンiGurafen-α(メジアン径60μm)と、iGurafen-αS(メジアン径10μm)を、混練機「ラボプラストミル」にて、メタクリル樹脂(ポリマー)に混練した。このサンプルを、真空下にて加熱しながらプレスし、棒状の成型サンプルを作製した。一方で、iGurafen-αをメタクリル酸メチル(モノマー)に分散させ、塊状重合にて硬化させた。これら成形材は、破断させた時の破断面をSEMにて観察し、さらに電気抵抗率を4探針法で計測した。一方で、今回使用した粉末そのものの物性を再確認するため、TEMや顕微ラマンによる計測、粉末の圧密抵抗(XY面方向4探針法とZ軸方向2探針法)の測定を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
まず20wt%にてiGurafen-αとiGurafen-αSをメタクリル樹脂に混練した。前者は通常の混練が可能であったが、後者は投入量が少なく、ローターに付いて回っるだけでせん断力が掛からず、粉末状になった。この粉末は樹脂粒子表面に多層グラフェンが張り付いた状態であった(写真左)。これらを電子顕微鏡で見ると、iGurafen-αの方のみにロール状に丸まった構造がみられた(写真右)。この構造は伝導率を落とす原因になり得るが、実際iGurafe-αの方は1.8Ωcmであるのに、せん断力のかからなかったiGurafen-αSの方は0.25Ωcmであった。通常、シート面積の小さいiGurafen-αSの方が導電パスが短く、抵抗は大きくなるが、むしろ小さくなったことにより、混練時のせん断力をなるべく抑えることが、伝導率の向上に重要であることがわかる。
また、iGurafen-αをモノマーに混合させてから(5wt%)重合させる方式も、せん断力がかからなないものであるが、SEMでは丸まった構造は見られず、電気抵抗も重合時の水平面方向が9.8Ωcm、鉛直方向が24Ωcmとなり、従来全くパーコレーション状態を達成できなかった5wt%成形材でも、導通が確認できた。
写真左: iGurafen-αS 20%のプレス前の粉末
写真右: iGurafen-α 20%の成型品
4.その他・特記事項(Others)
共同研究型利用における担当者氏名: 森本信吾
混練サンプルの作製は清水保雄信州大学名誉教授のご協力にて実施
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし
6.関連特許(Patent)
(1) 特開2014-000841 [特許権者:アイテック]