課題番号 ：S-15-MS-1014
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：多次元磁気格子を形成する有機ラジカル磁性体の低温磁気構造解明
Program Title (English) ：Study on low-temperature magnetic properties on organic radicals forming
multidimensional spin network
利用者名（日本語） ：細越裕子、岡田将孝、天谷直樹、奥田恭平、為国雄介、大塚怜、佐々木裕太、山口博則、
Username (English) ：Y. Hosokoshi, M.Okada, N. Amaya, K. Okuda, Y. Tamekuni, R. Otsuka, Y. Sasaki,
H. Yamaguchi
所属名（日本語） ：大阪府立大学大学院理学系研究科
Affiliation (English) ：Department of Physical Science, School of Science, Osaka Prefecture University,

１．概要（Summary ）
有機ラジカル磁性体は、スピン‐軌道相互作用の小さい理想的なハイゼンベルグスピン系を形成するため、その量子磁気状態に興味が持たれている。有機結晶は温度低下に伴う格子収縮率が大きいため、低温磁性の理解には低温構造を明らかにすることが重要である。本研究は、有機ラジカル磁性体の多次元ネットワーク形成と分子間磁気相互作用を理解するために、低温構造解析を行い、低温磁気状態を考察した。また単結晶電子スピン共鳴から、磁気相互作用を考察した。

２．実験（Experimental）
　大阪府立大学において合成した有機ラジカル結晶について、微小結晶用単結晶X線回折装置Rigaku社 MERCURY CCD-3を用いて、低温構造解析を行った。結晶をガラスキャピラリーに接着剤でマウントし25 Kまで冷却した。電子スピン共鳴装置/Bruker社 E500を用いてXバンドで3 Kまでの測定を行った。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　ニトロキシド系およびフェルダジル系有機ラジカル結晶の低温構造解析を多数行ったが、ここでは、3-(2,6-diclorophenyl)-1,5-diphenyl verdazylのα相結晶について報告する。空間群Fdd2に属し、結晶学的に独立な2分子を含み、その一方が2回軸上に存在する。そのため、分子Aと分子Bは2：1の存在比で、三倍周期鎖(-A-A-B-)を(a+b)方向に形成する。鎖間には、対角映進で関係づけられる分子A間の接近がみられ、結果として、部分的に頂点を共有する五角形の三次元格子が形成された。低温構造に基づき分子軌道計算を行った結果、隣接スピン間に磁気的な競合が示唆され、磁化の飽和近傍に観測された新しい量子相と関連付けることができた。

４．その他・特記事項（Others）
機器利用にあたり分子科学研究所 岡野芳則氏、藤原基靖氏の支援を受けた。本研究は科学研究費補助金　基盤研究(B）15H03695，(公財)池谷科学技術振興財団の援助を受けた。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) H. Yamaguchi, Y. Shinpuku, Y. Kono, S. Kittaka, T. Sakakibara, M. Hagiwara, T. Kawakami, K. Iwase, T. Ono, and Y. Hosokoshi, Phys. Rev. B, vol. 93 (2016) pp. 115145/1-7.
(2) H. Yamaguchi, T. Okubo, S. Kittaka, T. Sakakibara, K. Araki, K. Iwase, N. Amaya, T. Ono, Y. Hosokoshi, Scientific Reports, vol. 5, (2015) pp. 15327/1-6.
(3) 大塚怜,天谷直樹,山口博則，小野俊雄，野尻浩之，細越裕子，日本化学会第96春季年会,平成28年3月25日
(4) 岡部俊輝，山口博則，小野俊雄，細越裕子，橘高俊一郎，榊原俊郎，日本物理学会第71回年次大会，平成28年3月19日.
(5) 奥田恭平，菊地健太郎，山口博則，小野俊雄，天谷直樹，野尻浩，細越裕子,　 日本物理学会2015年秋季大会，平成27年9月16日.
(6) 岡田将孝，山口博則，小野俊雄，河野洋平A，橘高俊一郎A，榊原俊郎A，細越裕子, 日本物理学会2015年秋季大会，平成27年9月16日.
６．関連特許（Patent）
　なし