利用報告書

多段階的に動的構造変化を示すブロック共重合体によるバイオミメティック材料の 開発
小土橋 陽平
静岡理工科大学 理工学部

課題番号 :S-16-MS-1068
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :多段階的に動的構造変化を示すブロック共重合体によるバイオミメティック材料の
開発
Program Title (English) :Development of biomometic materials using multi-stimuli responsive block copolymers
利用者名(日本語) :小土橋 陽平
Username (English) :Y. Kotsuchibashi
所属名(日本語) :静岡理工科大学 理工学部
Affiliation (English) :Shizuoka Institute of Science and Technology, Departmentof Materials and Life Science

1.概要(Summary )
生命現象の理解に向け、様々な合成高分子が開発されている。温度応答性高分子は、その脱水和挙動が、タンパク質の変性のモデルやナノ粒子形成の駆動力として扱われている。当然ながら、タンパク質の特異的な箇所の相互作用による折りたたみ構造や、ウイルスの様に粒子表面に多機能性を付与する事を、温度応答性のホモポリマーのみで表現することは難しい。我々はこれまでに、複数の温度応答性を有するブロック共重合体に着目し、温度変化による多段階的な動的構造変化を報告してきた[1]。複数の温度応答性を持つブロック共重合体が織りなす動的構造変化は、低濃度域(Critical Micelle Concentration (CMC)以下)ではより精密なモデルタンパク質、高濃度域(CMC以上)では多機能性を有する粒子の調製を可能にするかもしれない。本申請では、多段階の温度応答性を有するブロック共重合体の脱水和挙動をDifferential Scanning Calorimetry(MicroCal VP-DSC)にて測定し、各ブロックに起因する温度応答性を確認することに成功した。
[1] Y. Kotsuchibashi et al, (a) Polymer Chemistry, 2017, 8, 295-302.; (b) Polymer Chemistry, 2015, 6, 1693-1697.; (c) Polymer Chemistry, 2014, 5, 3061-3070.; (d) ACS Applied Materials & Interfaces, 2013, 5, 10004-10010. (e) Polymer Chemistry, 2013, 4, 1038-1047.

2.実験(Experimental)
Differential Scanning Calorimetry(MicroCal VP-DSC)を用い、ブロック共重合体の温度応答性挙動を評価した。装置の安定化の為、純水による測定を12時間程度行い、ベースラインを安定させた。その後、サンプルであるエチレングリコールをベースとした高分子溶液を充填し、昇温することで各ブロックの脱水和挙動を評価した。得られたピークを専用のソフトウェアで解析し、脱水和による吸熱エネルギーの数値化を試みた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
各ブロックの温度応答性に起因するピークが観測された。各ピークの応答温度は、透過度変化により得られたものと一致しており、本手法にて温度応答性を追跡できることが示唆された。しかしながら、一部のピークにおいて重なり合いが生じ、各ブロックの温度応答性として分離することが困難であった。これにより高分子全体の脱水和力を吸熱エネルギーとして解析できるものの、各ブロックそれぞれのエネルギーを解析するには工夫が必要である。各ブロック単独での同様の評価を組み合わせることで、それぞれの吸熱エネルギーを考察できるかもしれない。1H NMRを用い、同条件にて特定のシグナルを追跡することで温度応答性を評価することにも成功している。現在これらのデータによる複合的な解析中であり、温度応答性高分子の多段階的な構造変化を解明していきたい。Y. Kotsuchibashi et al, in preparation.

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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