利用報告書

多相ナノ構造薄膜におけるマルチフェロイック特性の評価
中嶋聖介1), 前田明人1) , 木村諭紀雄2) (1) 静岡大学工学部, 2) 静岡大学大学院総合科学技術研究科工学専攻)

課題番号 :S-20-MS-1042
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :多相ナノ構造薄膜におけるマルチフェロイック特性の評価
Program Title (English) :Magnetic and Multiferroic properties in multi-phase nano-structured thin films
利用者名(日本語) :中嶋聖介1), 前田明人1) , 木村諭紀雄2)
Username (English) :S. Nakashima1), A. Maeda1), Y. Kimura2)
所属名(日本語) :1) 静岡大学工学部, 2) 静岡大学大学院総合科学技術研究科工学専攻
Affiliation (English) :1-3) Shizuoka University

1.概要(Summary )
近年、強磁性、強誘電性の両方を示すマルチフェロイック物質が活発に研究されている。これらの物質は電気磁気効果を示し、磁場によって誘電分極を、電場によって磁気的な分極を誘起することが可能であり、従来の磁気デバイスの省エネルギー化や大幅な小型化が実現すると期待されている。本研究では、強磁性体と強誘電体の多相複合材料に着目し、基板上に強誘電体と強磁性体を交互にスピンコートにより積層薄膜化することで、複合材料の作製を試みた。強磁性相にフェリ磁性であるスピネル型酸化物であるFe3O4ナノ微粒子を、強誘電体相にはペロブスカイト型構造を有するBaTiO3ゾルゲル薄膜を用いた。積層構造の組み合わせ、及び回数を変えた場合、磁気特性や誘電特性がどのように変化するかを詳細に調査した。
2.実験(Experimental)
強磁性体であるFe3O4ナノ微粒子を共沈法により作製し、分散水溶液を作製した。続いて、(CH3COO)2Ba、Titanium Butoxide、H2Oを混合し210分間、50℃で攪拌することでBaTiO3前駆体溶液を調整した。これらのナノ微粒子水溶液と前駆体溶液をSiO2基板上にスピンコートすることで、複合薄膜を作製した。Fe3O4分散水溶液の場合は、300℃、10分間仮焼成、BaTiO3前駆体溶液の際は900℃、5分間の焼成を各層毎に行った。異なる積層パターンの試料に対して、超伝導量子干渉計(SQUID:MPMS-7, MPMS-XL7)を用いて磁気的性質を調べた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
まず、各試料のXRD測定を行ったところ、ペロブスカイト型構造に帰属される回析ピークを確認した。一方、Fe3O4相のスピネル型構造の回折ピークは確認することができなかった。さらに、誘電率測定を行ったところ、ヒステリシスがみられ、強誘電性を示すことが確認できた。

図1. 磁化の温度依存性測定
電気磁気効果を確認するために、各積層薄膜に対する磁化の温度依存性を測定した(図1)。1層ずつ交互に積層した薄膜試料(BTOFe01)では、BTOの構造相転移温度付近において磁化のギャップが確認された。強磁性ナノ微粒子に近接したBaTiO3相において構造相転移が起こると、Fe3O4相の磁歪効果により磁化の変化が現れたと考えられる。一方、各BaTiO3層を2層連続とした試料(BTOFe02)では、ギャップは観測されなかった。結晶性により電気磁気効果の発現条件が変化したと考えられ、今後詳細について調査する必要がある。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 中嶋 聖介,レーザー学会学術講演会 第41回年次大会,2021年1月20日
(2) 木村 諭紀雄, 中嶋 聖介,第81回応用物理学会秋季学術講演会,2020年9月9日
6.関連特許(Patent)
なし

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