利用報告書

多重交差性抗体が認識する化学修飾タンパク質に関する研究
柴田貴広1),中島史恵1),畑佐行紀1),日沖裕介1),廣瀬冴美1),古橋麻衣1),内田浩二1)
1) 名古屋大学大学院生命農学研究科

課題番号 :S-15-NU-0012
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :多重交差性抗体が認識する化学修飾タンパク質に関する研究
Program Title (English) :Analysis of chemically-modified proteins recognized by polyspecific antibodies
利用者名(日本語) :柴田貴広1),中島史恵1),畑佐行紀1),日沖裕介1),廣瀬冴美1),古橋麻衣1),内田浩二1)
Username (English) :T. Shibata1), F. Nakashima1), Y. Hatasa1), Y. Hioki1), S. Hirose1), M. Furuhash1), K. Uchida1)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学大学院生命農学研究科
Affiliation (English) :1) Grad. Sch. of Bioagric. Sci., Nagoya Univ.

1.概要(Summary )
酸化修飾タンパク質を免疫したマウスより樹立したモノクローナル抗体は、酸化修飾タンパク質だけでなく、自己成分であるDNAに対しても交差性を示す。また一方で、自己免疫疾患モデルマウスより樹立したモノクローナル抗体の中にも、DNAと酸化変性タンパク質の両方に対して交差性を有するものが存在する。しかしながら、こうした多重交差性を示す抗体による抗原認識の分子的な基盤は明らかになっていない。これまでに利用者らにより、自然抗体IgMは抗原分子の電荷が関与している可能性を見出してきた。本研究では、酸化修飾などの化学修飾や食品成分などによるタンパク質のゼータ電位の変化と自然抗体IgMによる認識との関連性について検討を行った。

2.実験(Experimental)
モデルタンパク質であるヒト血清アルブミンに対し、ビタミン類やフラボノイド類を含む様々な食品成分をリン酸緩衝液中で37℃、24時間反応させた。24時間の反応終了後、Zetasizer Nano ZS(Malvern社製)によりヒト血清アルブミンのゼータ電位の変化および粒子径分布の変化を測定した。
また、様々な化学修飾による血清アルブミンの立体構造の変化を検討するため、タンパク質の疎水性領域に結合する蛍光プローブであるBis-ANSを処理したのち、FP-6500(JASCO社製)により蛍光分光光度計による蛍光強度を測定した。

利用装置
・動的光散乱(DLS)Malvern社製 Zetasizer Nano ZS
・蛍光分光光度計 JASCO社製 FP-6500

3.結果と考察(Results and Discussion)
Zetasizer Nano ZSでゼータ電位を測定したところ、未処理のヒト血清アルブミンと比較して、よりマイナス側へとシフトさせる食品成分が存在することが明らかとなった。なかでもある種のポリフェノールはその効果が強く、処理濃度依存的にタンパク質のデータ電位を低下させることが確認された。このことは自然抗体IgMによる認識と相関するものであり、実際に高濃度の塩化ナトリウムによりその相互作用が抑制されることから、自然抗体IgMによる修飾タンパク質の認識はタンパク質表面の電荷が重要であることが示唆された。
 コントロールの血清アルブミンと比較して、酸化させた血清アルブミンではBis-ANSの蛍光強度が上昇したことから、酸化的修飾により血清アルブミンの立体構造が変化し、疎水性領域が分子表面へ露出した可能性が考えられた。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 畑佐行紀, 古橋麻衣, 近澤未歩, 柴田貴広, 赤川貢, 立花宏文, 内田浩二. カテキンのリジルオキシダーゼ活性による自然抗体リガンド生成に関する研究. 日本農芸化学会中部支部第174回例会, 平成27年9月
(2) 畑佐行紀, 古橋麻衣, 近澤未歩, 柴田貴広, 赤川貢, 立花宏文, 内田浩二. カテキンのリジルオキシダーゼ活性による自然抗体リガンドの生成. 第88回日本生化学会大会. 平成27年12月

6.関連特許(Patent)
なし

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