利用報告書
課題番号 :S-20-MS-1055
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :大環状有機分子ラジカルイオンの電子スピン状態決定
Program Title (English) :Determination of Spin State on Macrocycle Organic Molecular Radical
利用者名(日本語) :茅原栄一, 加藤立久
Username (English) :E. Kayahara, T. Kato
所属名(日本語) : 京都大学化学研究所
Affiliation (English) : ICR、Kyoto University
1.概要(Summary )
芳香族分子は、特徴的な分子トポロジーや芳香族性に対する基礎的興味と共に、新しい物性や機能の発現可能性から多くの関心が寄せられている。当研究室ではシクロパラフェニレン(CPP)基本構造を基にして、多くの大環状有機分子を合成して、そのラジカルイオンが分子内芳香族性と呼ばれるヒュッケル芳香族性を持つことを明らかにしている。今回は大きさの異なる2つのCPPの二重輪錯体合成に成功したので、化学酸化で2価酸化物を生成してESR測定にして、その電子スピン状態を決定した。
2.実験(Experimental)
CW ESRスペクトルの極低温温度可変測定はOxfrord 900並びにOxford 910液体HeクライオスタットとBruker E500 ESR分光器を使用し、Pulsed Transition Nutation スペクトル測定はBruker E580分光器を使用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
5-10CPP、6-11CPP、7-12CPP、8-13CPP、9-14CPP、10-15CPPなるCPP輪の組み合わせで二重輪錯体が形成され、一連の錯体の二価酸化物についてESRスペクトルの1.5K〜室温までの温度変化を測定した。(下図参照)
その中で7-12CPP、8-13CPP二価酸化物が特に興味深いスピン状態を示した。上の図はそれぞれの信号強度と信号強度・温度の積を測定温度に対してプロットした結果で、青い実線がBleany-Bowersモデルによる二量体磁化率の理論プロットである。このフィッティングより7-12CPPは300cm-1(430K)、8-13CPPは9cm-1(13K)だけ熱励起された常磁性三重項スピン状態を持つことを結論できた。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし