利用報告書
課題番号 :S-17-NU-0002
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :安定な有機ラジカルの蓄電および光電変換材料への応用
Program Title (English) :Application of Air-stable Organic Radical to Secondary Batteries and Photoelectric Conversion Materials
利用者名(日本語) :森田美和, 伊藤 宏, 村田剛志, 森田 靖
Username (English) :M. Morita, H. Ito, T. Murata, Y. Morita
所属名(日本語) :愛知工業大学 工学部 応用化学科
Affiliation (English) :Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Aichi Institute of Technology
1.概要(Summary)
トリオキソトリアンギュレン(TOT)中性ラジカルは、25π電子系を持つ空気中でも安定な電子スピン非局在型の有機化合物である。我々は今回TOTを真空蒸着し、それを正極活物質として用いることでバインダーや導電助剤を必要としない、活物質100%の二次電池正極材料を作製した。走査電子顕微鏡およびX線散乱装置を用いて薄膜の厚みや形状、膜の配向性について分析評価を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
カスタマイズXRD装置(基本X線散乱装置Rigaku社製FR–E)
【実験方法】
試料を適切なサイズにカットし走査電子顕微鏡付属の試料台にカーボンテープを使用して接着し、室温・真空下においてSEM観察を行なった。有機物が中心のサンプルとなるため、加速電圧は2Vにして実施した。またX線散乱装装置の試料ステージ上にサンプルを静置し斜入射X線散乱測定 (GI-SAXS)を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
TOT真空蒸着膜の表面および断面SEM観察結果を示す(Fig.1)。 電子顕微鏡観察の結果より、TOTは基板に対して垂直に積層している形状である様子が確認された。またX線散乱装置の結果よりface–on配向優勢の薄膜であることを確認した(Fig.2)。 これらの結果からTOTを真空蒸着することにより配向性の高い薄膜が作製できることを確認した。蒸着条件のさらなる検討をかさね、二次電池正極材料として性能向上へ繋げていきたい。
Fig.1) TOT真空蒸着膜 表面および断面SEM
Fig.2) TOT真空蒸着膜 2D GI–SAXS pattern
4.その他・特記事項(Others)
X線測定でご協力、ご助言頂きました名古屋大学 永野修作准教授、原光生助教に感謝申し上げます。
科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究課題「安定な有機ラジカルの蓄電および光電変換材料への応用」(研究代表者:愛知工業大学 森田 靖 平成24年10月1日〜平成30年3月31日)からの支援を受けて実施されました。ここに感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) トリオキソトリアンギュレン安定有機中性ラジカル誘導体薄膜の作製・構造と電子物性
伊藤 宏・山川貴恵・島田敏宏・森田美和・辻 良太郎・村田剛志・森田 靖
第28回 基礎有機化学討論会
2017年9月7日〜9日、九州大学 伊都キャンパス、口頭発表
(2) Molecular Arrangement and Conducting Properties in Vapor Deposited Thin-Films of Trioxotriangulene Neutral π-Radicals
Morita, Y.; Ito, H.; Murata, T.; Morita, M.; Tsuji, R.
12th International Symposium on Crystalline Organic Metals, Superconductors and Magnets (ISCOM2017)
2017年9月25日〜29日、宮城県 蔵王ロイヤルホテル、ポスター発表
(3) 安定有機中性ラジカルを用いた有機薄膜二次電池
伊藤 宏、中山英樹、中西真二、森田美和、辻 良太郎、村田剛志、 森田 靖
第58回電池討論会
2017年11月14日〜16日、福岡国際会議場、口頭発表
(4) Organic Rechargeable Battery Using Thin-Films of Trioxotriangulene Neutral Radical
Murata, T.; Ito, H.; Nakayama, H.; Nakanishi, S.; Morita, M.; Tsuji, R.; Morita, Y.
CEMS International Symposium on Supramolecular Chemistry and Functional Materials 2018 (CEMSupra 2018)
「超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018」
2018年1月9日〜10日、東京大学 伊藤国際学術研究センター
(5) 有機活物質100%の二次電池:安定有機中性ラジカルの積層性と導電性の活用
村田剛志・伊藤 宏・森田美和・辻 良太郎・森田 靖
第98回春季年会 日本化学会、口頭B講演
(6) 有機活物質100%の二次電池:安定有機中性ラジカルの積層性と導電性の活用
村田剛志・伊藤 宏・森田美和・辻 良太郎・森田 靖
第98回春季年会 日本化学会、ATPポスター
6.関連特許(Patent)
発明の名称:二次電池
発明者:中山英樹、中西真二
、森田 靖、村田剛志、伊藤 宏
、森田美和
、辻 良太郎
出願人:トヨタ自動車株式会社
、学校法人 名古屋電気学園、株式会社カネカ
出願日:平成29年(2017年)9月29日
出願番号:特願2017-191732