利用報告書

尿路結石を構成するシュウ酸カルシウム結晶の核形成・成長・凝集にタンパク質が及ぼす影響 
丸山美帆子1)2), 高橋由利子2)(1) 大阪大学高等共創研究院, 2) 大学院工学研究科)

課題番号 :S-20-OS-0062 
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :尿路結石を構成するシュウ酸カルシウム結晶の核形成・成長・凝集にタンパク質が及ぼす影響 
利用者名(日本語) :丸山美帆子1)2), 高橋由利子2)
Username (English) : Mihoko Maruyama1)2), Yuriko Takahashi2)
所属名(日本語) :1) 大阪大学高等共創研究院, 2) 大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Osaka University Institute for Advanced Co-Creation Studies, 2) Graduate School of Engineering, Osaka University

1.概要(Summary )
尿路結石症は世界人口の12%以上が罹患する疾病であるが、その形成機構は未だに十分明らかになっていない。本申請では、尿路結石を構成する主要な結晶であるシュウ酸カルシウム(CaOx)の結晶核発生過程をデータサイザー測定するためのcontrol測定を行った。また、結石形成には多種多様のタンパク質が影響を及ぼすことが報告されている。これらタンパク質が核形成過程に及ぼす影響を評価していくために、タンパク質が存在する条件でのcontrol測定も行った。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S07 ナノ粒子解析装置(ゼーターサイザー)
【実験方法】
シュウ酸カルシウムの核形成実験に用いる下記の溶液について、基準となる光散乱のデータを取得した。添加するタンパク質のモデル物質として、鶏卵白リゾチームを用いた。シュウ酸カルシウムを結晶化する際にはこれらの溶液にさらに塩化カルシウムを混合するが、今回はこれを添加せず、結晶化が進行しない状況において、タンパク質の有無が粒子径分布にどのように影響するかを確認することを目的とした。
① NaCl 150 mM, Na2C2O4 10 mM, 混合溶液
② NaCl 150 mM, Na2C2O4 10 mM, 鶏卵白リゾチーム 1000 μg/ml 混合溶液
それぞれの溶液を光学用の角セルに2 ml分注した後速やかにゼータサイザーでの測定を開始した。ゼータサイザーでの測定条件は、10秒間の測定を2回行うことを1セットとし、これを連続的に10回くりかえした。測定対象は、粒子の個数、および散乱強度とした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
①のタンパク質添加無しの条件では、図1(a)のように0.8 nm前後に全体の個数分布が存在した。一方で、タンパク質添加ありの②では、3 nm前後に平均粒径が集中していた。3 nmは、今回用いたリゾチーム分子のサイズとおおよそ一致しており、結晶化が進行しない条件であっても溶液中に添加したリゾチーム分子が検出された。今後予定しているシュウ酸カルシウムの結晶核形成過程を評価する際には、タンパク質分子の粒径分布を考慮して差し引くなどのデータの補正が必要であることが分かった。どのような補正が適しているかは、今後のさらなる条件検討に基づいて決定する。

図1 (a)タンパク質添加無し,(b)タンパク質添加有りの粒径個数分布.

4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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