利用報告書

層状腹水酸化物中に含まれる電子周りの局所構造解析
北野政明, 阿川陽 , 松石聡 , 細野秀雄(東京工業大学元素戦略研究センター)

課題番号 :S-20-MS-0025
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :層状腹水酸化物中に含まれる電子周りの局所構造解析
Program Title (English) :Local structure analysis around electrons contained in layered double hydroxides
利用者名(日本語) :北野政明1), 阿川  陽1) , 松石 聡1) , 細野 秀雄1)
Username (English) :M. Kitano1), Y. Agawa1), S. Matsuishi1) , H. Hosono1)
所属名(日本語) :東京工業大学元素戦略研究センター
Affiliation (English) :1) Materials Research Center for Element Strategy, Tokyo Institute of Technology

1.概要(Summary )
無機エレクトライドは、結晶格子中のアニオンサイトに電子を有する材料であり、通常は還元的雰囲気で1000℃以上の高温で加熱することにより合成されている。本研究では、層状腹水酸化物Mg6Al2(OH)16Cl2∙nH2Oの層間アニオンであるCl-を溶媒和電子により室温でアニオン交換することにより合成した新規層状腹水酸化物エレクトライドの電子の存在状態、電子周りの局所構造解析を電子スピン共鳴により詳細にしらべた。

2.実験(Experimental)
 溶媒和電子電子によりアニオン交換していない層状腹水酸化物と、アニオン交換後の層状腹水酸化物をそれぞれ電子スピン共鳴装置(Bruker E-680)により調べた。測定は、2-pulse法で室温および30 Kで行った。また、30 Kにおいて3-pulse法ESEEMの測定も行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 溶媒和電子でアニオン交換した層状腹水酸化物を2-pulse法で室温および30 Kで測定したところ、不対電子存在に由来するシグナルが観察された。さらに、電子濃度が異なると予想される2種類の試料を同様に測定したところ、両者ともg値=2.005付近に強いシグナルが確認された。試料管壁面に試料が付着するなど測定域の試料量を正確に定量できないため比較は難しいが、本手法で合成した層状腹水酸化物には、再現性よく電子が導入できていることが確認できた。また、アニオン交換前の層状腹水酸化物には、シグナルが観察されなかったため、溶媒和電子によるアニオン交換に成功していると考えられる(図1)。
 また、3-pulse法ESEEMの結果から、電子の近傍に水素およびアルミニウムが存在することが明らかとなった。今後より詳細な解析は必要であるが、層状腹水酸化物が有する骨格のAlやOH基のプロトンが電子の近傍に存在することが示唆された。

4.その他・特記事項(Others)
該当なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし

6.関連特許(Patent)
該当なし

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.