利用報告書

希釈冷凍機温度での機能性分子システムの磁場中熱容量測定の開発
中澤康浩1), 山下智史1),今城周作1)、圷広樹1)
1)大阪大学大学院 理学研究科

課題番号 :S-16-MS-0033
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :希釈冷凍機温度での機能性分子システムの磁場中熱容量測定の開発
Program Title (English) :Development of Heat Capacity Measurement System under Magnetic Fields
Using Dilution Refrigerator
利用者名(日本語) :中澤康浩1), 山下智史1),今城周作1)、圷広樹1)
Username (English) :Y. Nakazawa1), S. Yamashita1), S. Imajo1), H. Akutsu1)
所属名(日本語) :1)大阪大学大学院 理学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Sciece、Osaka University

1.概要(Summary )
分子性の電荷移動塩は有機ドナー分子やアクセプター分子がカウンターになる対イオンと分離積層型に配列した層状物質である。その物性は、有機分子層内での分子配列に強く依存し様々なバリエーションを与える。強相関系であるとともに電子・格子のカップリングが強く、比較的弱い電場、磁場、圧力などの効果で電子状態が大きく変化するため、電界効果トランジスター(FET)をはじめとする分子性のデバイスとして、有効な物質系が形成される。本研究案では、このような電荷移動塩の分子性デバイスとしての新機能を開発するために、機器センターにある希釈冷凍装置の立ち上げ、性能評価、各種実験装置のセットアップを行い、共同利用装置としての利便性をあげるとともに分子性超伝導体の角度分解磁気熱容量測定を行なった。
2.実験(Experimental)
実験には、低温棟地階004室に設置された希釈冷凍装置(Kelvinox300)を用いた。研究前半は、ヘリウムガスの流量を制御するNeedle Valve, 自動制御のためのインターフェースをはじめ一部の部品に動作不良があり、その修理、低温リークのチェック等を行った。また、直流電流源から発生するrfノイズの影響を除去するため、フィルター回路の導入による実験の安定化を進めた。その結果、冷却能力は100mKで300W以上、混合器の最低到達温度が25mKとなり、また磁場は磁場14 Tまで印加可能であることを確認した。
熱容量の測定を行うために、分子性化合物の極低温測定用に開発された緩和型セルを大阪大学から持ち込み希釈冷凍機温度領域での磁場中温度較正を行った。ゼロ磁場および14Tまでの磁場中での伝導度の測定が可能になった。また、結晶の方向を磁場中で回転するために、アングルローテータを設置し角度分解輸送現象、磁気熱容量測定が可能な装置を整備した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.1に示したのは極低温領域での熱容量測定セルの温度依存性である。高温側(1K以上)のデータは大阪大学において3Heクライオスタットを用いて測定したデータであり、低温側は、分子研希釈冷凍機温度でのデータである。温度計やヒーター材料に含まれる常磁性不純物の影響で熱容量は磁場によって変化するが、両者は測定が重複する温度域(0.7-1.1K)で絶対値を含めて一致し、磁場中での熱容量測定が可能であることを示している。低温領域でバックグランドで5-20 nJ K-1の熱容量を示していることから、分子性伝導体、超伝導体100g程度の単結晶で十分な精度の測定が可能である。-(BETS)2GaCl4の超伝導状態での熱容量測定から超伝導状態中でT2の温度依存性を示す電子熱容量を検出することに成功した。
4.その他・特記事項(Others)
「なし」
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Y. Nakazawa, 71st Calorimetry Conference, August 3.
6.関連特許(Patent)
「なし」

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