課題番号 ：S-20-MS-1004
利用形態 ：施設利用
利用課題名（日本語） ：常温常圧での人工窒素固定を目指した新規窒素錯体の合成と電子的性質
Program Title (English) ：Syntheses and electronic properties of novel dinitrogen complexes for nitrogen fixation under mild conditions
利用者名（日本語） ：小久保佳亮1), 梶田裕二2)
Username (English) ：K. Kokubo1), Y. Kajita2)
所属名（日本語） ：1) 愛知工業大学大学院工学研究科, 2) 愛知工業大学工学部応用化学科
Affiliation (English) ：1) Graduate School of Engineering, Aichi Institute of Technology
2) Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Aichi Institute of Technology

１．概要（Summary ）
　常温常圧での窒素固定法の研究開発が現在盛んに行われている。申請者所属の研究グループでは、これまでにクロム(III)を用いた二核窒素錯体を開発し、それを用いた窒素固定を見出している。しかし、反応機構についてはまだ未解明である。
そこで、2020年度は二核クロム窒素錯体のプロトン化反応における中間体について、NMR測定や結晶構造解析を行い、その結果を考察した。
２．実験（Experimental）
当研究室でて開発した二核クロム窒素錯体（1）を、還元剤であるナトリウム（Na）やカリウム（K）とそれぞれ反応させ、生成物を再結晶により単離した。単結晶X線結晶構造解析により生成物の構造を決定した。また、1H, 23Nおよび39K NMR測定により溶液中での構造を検討した。NMR測定は、600MHz核磁気共鳴装置（JEOL JNM-ECA600）を用いて行った。
３．結果と考察（Results and Discussion）
　錯体1（図1）をNaおよびKとそれぞれ反応させて得られた錯体2および3の結晶構造を図2および3に示した。また、錯体2および3について1H, 23Naおよび39K NMRの測定をそれぞれ行ったところ、39K NMRではピークが検出できなかったものの、1H NMRでは化合物2および3ともにC3対称を示すスペクトルが得られ、錯体2の23Na NMRスペクトルでは1本のピークを観測した。これらの結果より錯体1がアルカリ金属イオン含有還元剤と反応すると、Cr-N2-AM (AM: Na+ (2) or K+ (3))の中心構造を含む錯体が生成していることが示唆された。
４．その他・特記事項（Others）
本研究での単結晶X線結晶構造解析は、名古屋工業大学の増田秀樹教授、小澤智宏教授に、また、NMR測定では分子科学研究所機器センターの長尾春代様に大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。最後に、本研究は、科学技術振興機構基盤研究C(20K05545)のサポートによって行われました。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) Y. Kokubo, Y. Wasada-Tsutsui, S. Yomura, S. Yanagisawa, M. Kubo, S. Kugimiya, Y. Kajita, T. Ozawa, H. Masuda “Syntheses, Charactertizations, and Crystal Structures of Dinitrogen-Divanadium Complexes Bearing Triamidoamine Ligands” Eur. J. Inorg. Chem. pp.1456-1464 (2020).
(2) 小久保佳亮・梶田裕二 錯体化学会第70回討論会（令和2年9月29日）
(3) 小久保佳亮・梶田裕二 日本化学会第101春季年会（令和3年3月20日）
６．関連特許（Patent）
なし