利用報告書

常温常圧での窒素固定を目指した新規窒素錯体の合成と電子的性質
都築和貴1), 小野元也2), 小久保佳亮2), 梶田裕二2)
1) 愛知工業大学大学院工学研究科, 2) 愛知工業大学工学部応用化学科

課題番号 :S-17-MS-1063
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :常温常圧での窒素固定を目指した新規窒素錯体の合成と電子的性質
Program Title (English) :Syntheses and electronic properties of novel dinitrogn complexes for nitrogen fixation under mild conditions
利用者名(日本語) :都築和貴1), 小野元也2), 小久保佳亮2), 梶田裕二2)
Username (English) :K. Tsuzuki1), Y. Kajita1)
所属名(日本語) :1) 愛知工業大学大学院工学研究科, 2) 愛知工業大学工学部応用化学科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering, Aichi Institute of Technology, 2) Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Aichi Institute of Technology

1.概要(Summary )
 現在の人工窒素固定は高温高圧が必要なハーバー・ボッシュ法によって行われている。これまでに当研究室では、窒素固定化酵素であるニトロゲナーゼの機能を模倣することによって、常温常圧での窒素固定実現に向けた、新しい窒素錯体の合成に成功し(図1)、その構造とアンモニア発生について検討してきた。そこで、本研究では合成したこれらの錯体の電子的な性質を明らかにすることによって、窒素固定に必要な要因を明らかにすることを目的とした。
2.実験(Experimental)
 本研究で用いたバナジウム-窒素錯体(1)、およびクロム-窒素錯体(2)(図1)については、単結晶X線結晶構造解析と溶液中での共鳴ラマンスペクトル測定から溶液中でも結晶構造と同様に二核構造を保持していることをすでに明らかにしている。そこで、詳細な電子状態を明らかにするため、溶液でのNMR測定および磁化率測定を行った。NMR測定は、JEOL JNM-ECA600を用いてC6D6もしくはDMSO-d6中で測定した。磁化率測定については、SQUID型磁化測定装置Quantum Design MPMS-7を用い、2 – 297Kの間で測定を行なった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 バナジウム錯体1の1H NMRスペクトルは反磁性領域にシャープなピークを示した。次に、15N2でラベリングした1を用いて15N NMR測定を行ったが、ピークを観測することができなかった(緩和時間5s)。これは14Nおよび51Vとのカップリングにより大きくブロードしているためと考えた。そこで、15N NMR測定(緩和時間100s)を再度行ったところ33.4 ppm(ニトロメタン基準)にブロードなピークの観測に成功した。また、錯体1をHOTfおよびNaC10H8と室温で反応させることによって300%の収率でアンモニアを得た(二核錯体に対して)。得られたアンモニアの15N NMR測定から、アンモニアの窒素原子が架橋窒素由来であることを明らかにした。
 次に、クロム錯体5について磁化率測定を行った。その結果、eff = 3.32Bであったことから、S = 1の状態であることを明らかにした。この結果は、これまで報告されていない高原子価での窒素捕捉に成功したことを示した。

4.その他・特記事項(Others)
 なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 都築和貴, 梶田裕二,錯体化学会第67回討論会,平成29年9月18日.
(2) 小久保佳亮, 都和貴, 梶田裕二,日本化学会第98春季年会,平成30年3月21日.

6.関連特許(Patent)
 なし。

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