課題番号 ：S-15-MS-1067
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：常磁性異種金属一次元鎖錯体の磁気物性評価
Program Title (English) ：Studies on magnetic properties for paramagnetic one-dimensional
heterometallic chains
利用者名（日本語） ：植村 一広, 齋藤 尚紀, 下総 浩靖, 栃川 昌平
Username (English) ：K. Uemura, N. Saito, H. Shimofusa, S. Tochikawa
所属名（日本語） ：岐阜大学
Affiliation (English) ：Gifu University

１．概要（Summary）
　我々は、2種類の金属錯体の電子構造を考慮して、複数種の金属からなる一次元鎖錯体の合成に成功している。今回、3種類の金属が規則的に並んだ、[{Rh2(O2CCH3)4}{Pt2Cu(piam)4(NH3)4}]n(PF6)2n (1, 2, piam = pivalamidate)と[{Rh2(O2CCH3)4}{Pt2Cu(piam)4 (NH3)4}2](CF3CO2)2(ClO4)2·2H2O (3)を合成した（図1）。1と2は、–RhII–RhII–PtII–CuII–PtII–と金属が並んでおり、同じ組成にも関わらず、2の方が直線性が高い。3は、PtII–CuII–PtII–RhII–RhII–PtII–CuII–PtIIと並んだ一次元状八核構造をとっている。1、2、3のいずれも、Cu dx2–y2軌道に不対電子を有しているが、その数と相互作用の大きさは定かではなく、帯磁率測定で評価した。

２．実験（Experimental）
　SQUID型磁化測定装置 Quantum Design MPMS-7を使用し、1、2、3の帯磁率測定をした。1、2、3の粉末を秤量し、サランラップとカプセルに封入し、ストロー中に固定して測定した。

３．結果と考察（Results and Discussion）
　1–3の2 K、–70～70 kOe磁場印加下の磁化測定の結果、1と2では組成あたりに不対電子が1つ、3では2つ有していることがわかった。ESR測定などの結果を考慮すると、すべてのCu dx2–y2軌道に不対電子が1つずつ存在することがわかった。
　また、1–3の磁化率測定の結果、1と2では、5–300 Kで、χMTが1: 0.44, 2: 0.41 emu mol–1 Kと、ほぼ一定であった。すなわち、一次元鎖内の隣接Cu間での相互作用がほとんどみられなかった。一方、3では、300 KでχMTは0.91 emu mol–1 Kで、150 K以下から緩やかに減少し、5 Kで0.78 emu mol–1 Kとなった。これは、一次元状八核構造内の隣接Cu間で、弱い反強磁性相互作用が働いているためと考えられる。

４．その他・特記事項（Others）
　日本学術振興会科研費補助金 基盤（C）（No. 15K05449）「二重交換相互作用に基づく異種金属一次元多核錯体での強磁性発現」の支援のもと遂行した。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 植村一広, 第65回錯体化学討論会, 平成27年9月21日.
(2) 齋藤尚紀, 植村一広, 海老原昌弘, 第46回中部化学関係学協会支部連合秋季大会, 平成27年11月7日.
６．関連特許（Patent） なし