利用報告書
課題番号 :S-18-MS-2001
利用形態 :通常利用
利用課題名(日本語) :強磁性鉄単原子層-窒化ニッケル単原子層における界面磁気効果
Program Title (English) :Interfacial magnetic coupling between ferromagnetic iron and nickel nitride monatomic layers
利用者名(日本語) :宮町俊生1), 川口海周1), Thomas Gozlinski 1,2), 小板谷貴典3,4), Wulf Wulfhekel 2),
横山利彦3,4) , 小森文夫1)
Username (English) :T. Miyamachi1), K. Kawaguchi1), Thomas Gozlinski 1,2), T. Koitaya2,3), Wulf Wulfhekel 2),
T. Yokoyama2,3), F. Komori1)
所属名(日本語) :1) 東京大学物性研究所, 2) カールスルーエ工科大学, 3) 分子科学研究所,
4) 総合研究大学院大学
Affiliation (English) :1) Institute for Solid State Physics (ISSP), The University of Tokyo
2) Karlsruhe Institute of Technology (KIT)
3) Institute for Molecular Science
4) The Graduate University for Advanced Studies (SOKENDAI)
1.概要(Summary)
L10型結晶構造を持つFeNi規則合金薄膜は強い垂直磁気異方性を示すことが期待され、レアメタルフリー磁性材料として材料分野を中心に研究が進められている。先行研究では分子線エピタキシー法を用いたL10型FeNi規則合金薄膜の作製が行われ、垂直磁気異方性発現のためのL10規則度の重要性が示されたが、Fe/Ni界面の相互拡散や下地基板原子の表面偏析の影響で全体的に40 %程度しか規則化しておらず、垂直磁化も実現されていない。この規則度低下の問題を解決するため、近年我々は窒化物単原子層の窒素サーファクタント効果を利用したFeNi規則合金薄膜の高品質化に取り組んでいる。本研究は初期段階としてCu(001)上の窒化ニッケル単原子層(Ni2N)に強磁性鉄単原子層(Fe2N)を積層し、その構造と界面磁気結合状態の相関を走査トンネル顕微鏡(STM)とX線吸収分光/X線磁気円二色性 (XAS/XMCD) 測定により明らかにすることを目的とする。
2.実験(Experimental)
測定はUVSOR BL4Bの装置を用いて行った(6.1 K、0-5 T)。Ni2Nの作製条件はSTM観察により事前に明らかにしている。Ni2N作製後、Fe1原子層を約-100℃で低温成長させた試料および約150℃でポストアニールした試料のXAS/XMCD測定を面直・面内配置で行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
XAS/XMCD測定の結果、先行研究同様、Ni2Nには面直・面内配置ともに明瞭なXMCDシグナルは観測されなかった。しかし、Fe1原子層を積層後、窒素サーファクタント効果によって系の構造が変化し[Ni2N/Cu(001) → Fe2N/Ni/Cu(001)]、Ni XMCDシグナルが現れた。さらに、Fe/Ni界面における磁気結合によってFe2Nの強い面内磁気異方性が弱められ、相対的に面直磁化が増大することも磁化曲線測定から明らかになった。ポストアニールした試料についても同様の結果が得られたが、磁気モーメントや磁気異方性の増大等、磁気特性の改善が確認された。適切な温度での加熱処理により界面拡散を抑えながらFe/Ni界面の規則化が促進されたためだと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費 若手研究(A) 16H05963、基盤研究(B) 18H01146の助成をうけて行われた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
・論文発表1件, 学会発表6件
[1] S. Nakashima et al., Adv. Funct. Mater 29, 1804594 (2019).
6.関連特許(Patent)
なし。