利用報告書

微細形態評価に基づくドラッグデリバリー高分子粒子製剤の設計
高橋 知里
1) 愛知学院大学薬学部製剤学講座

課題番号               :S-17-NI-0011

利用形態                :共同研究

利用課題名(日本語)    :微細形態評価に基づくドラッグデリバリー高分子粒子製剤の設計

Program Title (English):Design of polymeric particles based on morphological structure

利用者名(日本語)      :高橋 知里

Username (English)    :C. Takahashi

所属名(日本語)        :1) 愛知学院大学薬学部製剤学講座

Affiliation (English):1)Aichi Gakuin University

 

1.概要(Summary )

利用者らはこれまでに,高分子微粒子をキャリアに用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)を設計してきた.この試みの中で,通常の薬剤投与では治療効果が見込めない疾病に対し,DDS製剤が有用であることを見出している.しかし,高分子微粒子の形態が治療効果にどのような影響を与えているかについては明らかにされていない.そこで,調製した種々の高分子粒子製剤の微細形態を電子顕微鏡を用いて明らかにし,製剤効果と照合した.本実験では,根治治療が困難であるバイオフィルム感染症をターゲットとし,治療に有用なDDS製剤を設計することを目的とした.

2.実験(Experimental)

本実験ではモデル菌として,表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を用いた.高分子粒子製剤は、水中エマルション溶媒拡散法により生分解性高分子であるPLGAを基剤とし調製した。その粒子表面をキトサンで修飾または粒子に疎水性イオン液体及び銀微粒子を封入した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察には,調製した高分子製剤を試料に用いた。試料は,観察用の親水性イオン液体を処理した後,真空乾燥しオスミウムコーティングしたものを観察に用いた.観察には,日本電子製のJEM-ARM200FJEM-2100Fを用い,試料冷却ホルダーで試料を冷却しながら形態観察を行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)

図1に示すように,イオン液体を封入しキトサン修飾したPLGA高分子粒子製剤は,明視野STEM像及び環状暗視野STEM像ともに,粒子全体に電子密度の大きな変化は見られなかった.このことから,イオン液体は偏析することなくPLGAの高分子マトリックス内部にトラップされていることが示唆された.一方,銀ナノ粒子を封入したPLGA高分子粒子製剤では,銀ナノ粒子が高分子粒子の界面に凝集して存在しており,PLGA高分子粒子内にうまく封入されていないことがわかった.また,形態観察の結果から,高分子粒子同士自体も凝集していることが明らかになった.この結果を踏まえ,銀ナノ粒子を合成する際に用いる硝酸銀と還元剤の比率を変えることで高分子粒子製剤の調製法の最適化を行い,治療効果を十分に発揮することが可能なPLGA高分子粒子製剤の調製法を確立することができた.

4.その他・特記事項(Others)

医学生物学電子顕微鏡技術学会奨励賞受賞(2017年5月)。本研究実施にあたり、名古屋工業大学 浅香透准教授にご協力いただきました。ここに謝意を表します。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) 高橋知里,第1回界面特性を利用した粒子設計とプロセス開発に関するワークショップならびに粉体グリーンプロセス研究会講演会(東京)(2017年5月)招待講演

(2) 高橋知里, Nano Science and Technology 2017 (福岡)(2017年10月)招待講演

6.関連特許(Patent)

なし

©2025 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.