利用報告書

悪性リンパ腫とぶどう膜炎のラマン散乱光解析による鑑別
岩﨑優子

課題番号                :S-20-NM-0017

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :悪性リンパ腫とぶどう膜炎のラマン散乱光解析による鑑別

Program Title (English) :Discrimination between lymphoma cells from leukocytes involved in intraocular inflammatory diseases using Raman Spectroscopy

利用者名(日本語)      :岩﨑優子

Username (English)     :Y. Iwasaki

所属名(日本語)        :東京医科歯科大学眼科学教室

Affiliation (English)  :Department of Ophthalmology and Visual science, Tokyo Medical and Dental University

 

1.概要(Summary )

眼内に炎症細胞や腫瘍細胞が浸潤すると、眼内が混濁し視力低下をきたす。本研究の目的は、眼内への浸潤が報告されている種々の細胞種(Tリンパ球、Bリンパ球、好中球、単球やリンパ腫細胞)の鑑別にラマン散乱光解析が有用であるかを検討し、将来ヒト眼内の硝子体混濁成分をin vivoにて非侵襲的に解析することの有用性を評価することである。

 

2.実験(Experimental)

使用装置名:高速レーザーraman顕微鏡「RAMAN plus」

そのほか、クリーンベンチ、インキュベーターを定義使用。

 

リンパ腫セルラインKML-1、HF、A4/Fukと、眼炎症性疾患にて眼内に浸潤する細胞として活性化T細胞、活性化マクロファージ、好中球を用いた。細胞は東京医科歯科大学で培養。サンプラテック社の定温輸送ボックスを用いて運搬した。

細胞はPBS(-)で懸濁し石英のガラスボトムdishへ入れ、100倍水浸対物レンズを用いて観察およびラマン散乱光の測定を行った。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

活性化T細胞、活性化マクロファージ、好中球由来のラマンスペクトラムと、3つのリンパ腫セルライン由来のラマンスペクトラムを取得した。なお、血球は正常ボランティア3名から得、再現性を確認した。

 

主成分分析および二次判別分析を行い、ラマンスペクトラムによるリンパ腫細胞の鑑別能を検討した。結果、感度0.85–0.94、特異度0.95–0.96であった。検査の正確性の指標として、Receiver operating characteristic (ROC) curvesのArea Under Curve(AUC)も算出した。ROC-AUCは0.89-1.00と、良好な結果であった。

 

今回の結果から、ラマン散乱光解析は1細胞レベルの測定で悪性リンパ腫と活性化T細胞、活性化マクロファージ、好中球を鑑別できることが示された。これらのコントロール細胞は眼内悪性リンパ腫の鑑別疾患として重要なぶどう膜炎において眼内に浸潤する細胞種である。今後、眼内撮影機器の開発が行われれば、眼内悪性リンパ腫の診断にラマン散乱光解析が有用であること示された。

 

4.その他・特記事項(Others)

計測にあたってはNIMS服部氏、李香蘭氏、高橋みどり氏の支援を受けた。

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) Yuko Iwasaki, Masahiko Kawagishi, Hiroshi Takase, Kyoko Ohno-Matsui. Sci Rep,Discrimination of dissociated lymphoma cells from leukocytes by Raman spectroscopy (2020)

(2) 岩﨑優子, 高瀬博, 大野京子.ラマン散乱光解析による悪性リンパ腫とB細胞の鑑別.第123回日本眼科学会総会, 2019.4.19, 東京都

 

 

6.関連特許(Patent)

なし

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