利用報告書
課題番号 :S-18-MS-1059
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :拡張π電子系化合物の構造と物性に関する研究
Program Title (English) :Structural and physical properties of extended -electron systems
利用者名(日本語) :白旗 崇
Username (English) :T. Shirahata
所属名(日本語) :愛媛大学大学院理工学研究科(工学系)
Affiliation (English) :Graduate School of Science and Engineering, Ehime Unversity
1.概要(Summary)
2つのTTFが融合したBDT-TTPを成分とする分子性導体は低温まで金属状態を保持することが知られている。しかしながら、抵抗の温度依存性において抵抗の飛びが観測されることが多く、結晶に生じたマイクロクラックによるものか、転移に起因するのか詳細は明らかになっていない。BDT-TTPの誘導体であるDMTTPのラジカルカチオン塩について、室温及び低温の構造解析を検討し、抵抗の飛びが構造相転移に起因することを明らかにした。
2.実験(Experimental)
極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製 HyPix-AFC (旧名CCD-3))
分子性導体(DMTTP)2PF6 の極微小結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。吹き付け型の低温装置を用いて300–50 Kの温度範囲で回折データを取得した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
(DMTTP)2PF6 は低温まで金属的な挙動を示すが、面内抵抗測定において、複数の抵抗の飛びが見られる。一方、面間抵抗測定では90 Kのみに抵抗の飛びが観測される。この温度で何らかの転移が起きていると予想して、300–50 Kの温度範囲で格子定数の温度変化を測定した。
図1に格子体積(V)の温度変化を示す。80–100 KにおいてVの不連続な変化が観測された。同様の不連続な変化は他の格子定数(a, b, c, , , )においても見られている。これは90 Kにおける抵抗の飛びが構造相転移に起因していることを示している。この構造相転移の起源については低温相の精密な構造解析に至っていないため、現在のところ不明である。2019年度に採択された課題で、この構造相転移の起源を明らかにする計画である。
図1. (DMTTP)2PF6の格子体積(V)の温度依存性。
4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSPS科研費15H03798および愛媛大学電池材料開発研究ユニット・有機超伝導体研究ユニットの助成を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) N. Kinoshita, T. Shirahata and Y. Misaki, Bull. Chem. Soc. Jpn., Vol. 91 (2018) p.p.1553-1555.
(2) T. Shirahata, T. Ito, S. Toki, S. Katayama, N. Kinoshita, Y. Misaki, The Toyota Riken International Workshop; Organic Semiconductors, Conductors, and Electronics, October 25, 2018.【Invited Talk】
6.関連特許(Patent)
なし