利用報告書
課題番号 :S-20-KU-0007
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :携帯用カセットボンベ燃料電池用プレート型改質器の開発
Program Title (English) :Development of plate-type reformer for portable fuel cell operated by butane gas cartridge
利用者名(日本語) :ヘンドリック セチアワン、平嶋 雅樹、神尾 健、白鳥 祐介
Username (English) :H. Setiawan, M. Hirashima, K. Kamio, Y. Shiratori
所属名(日本語) :九州大学
Affiliation (English) :Kyushu University
1.概要(Summary )
本研究では、多くの家庭が調理用に常備しているカセットボンベを燃料源とした携帯型燃料電池システムの実現に向け、任意の高機能触媒材料を容易に分散可能で、触媒機能の傾斜化も可能なペーパー触媒(PSC)技術を適用したプレート型の改質器の開発を行っている。カセットボンベ燃料には腐臭材として硫黄化合物が添加されているため、脱硫剤への硫黄吸着挙動およびPSCの硫黄被毒劣化挙動の把握が不可欠であり、これらを明らかにすることを目的に、ナノテクPF支援を利用した。
2.実験(Experimental)
X線光電子分光分析装置AXIS-ULTRA(島津製作所製)を用いて、サンプルの構成元素の電子の結合エネルギーを評価し(XPS測定)、各元素の存在状態を解析した。この結果から、炭素材料の硫黄吸着挙動およびPSCの硫黄被毒劣化挙動を考察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
カセットボンベ燃料からの水素製造中に、腐臭剤(硫黄化合物)が脱硫されずに改質器に入ってきた場合を想定し、700oCにおけるブタン水蒸気改質(C4H10 + 4H2O → 9H2 + 4CO)中に、5 ppm のH2Sを燃料に混入させた被毒試験を行った。その結果、ハイドロタルサイト(MgとAlを含む複合酸化物:HT)を無機繊維ネットワーク内に分散させたNi担持ペーパー触媒(Ni/HT-PSC)は、商用ビーズ触媒(Ru-Al2O3)に比較して高い硫黄被毒耐性を示し、ブタン転化率は試験中100%を維持した。Ni/HT-PSCの高い硫黄被毒耐性を考察するために、被毒試験後のNi/HT-PSCに対してXPS測定を行ったところ、S 2pおよびMg 2p軌道のピーク位置から、硫酸塩の生成が検出され、HTがH2Sを選択的に吸収し、Ni触媒の硫黄被毒が軽減されていることが示唆された。今後、HT/セラミックファイバー比およびNi/HT比をチューニングし、さらなる硫黄被毒耐性の向上を図る。
炭化水素の供給で作動する燃料電池の商用レベルの安定作動には、燃料の脱硫が不可欠であり、バイオ資源由来の炭素(バイオチャー(BC))を脱硫剤として用いる研究を行っている。BCに窒素ドープすることで、脱硫性能が格段に向上したが、そのメカニズムを探るため、XPS測定を行った。その結果、Pyridinic-Nの生成が脱硫性能の向上に不可欠であるが、過度に窒素ドープを行うとSulfateが生成し、H2S吸着容量が低下する要因となることが示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし