利用報告書
課題番号 :S -16-SH – 0022
利用形態 :共同研究型
利用課題名(日本語) :摩擦撹拌処理によるAl-CNT複合材の機械的特性の改善
Program Title (English) :Improvement in Mechanical Properties of Al-CNT Composite by Friction Stir Processing
利用者名(日本語) : 尾和 智信 (課題申請者はアンダーライン)
Username (English) : T. Owa
所属名(日本語) :長野県工科短期大学校 生産技術科
Affiliation (English) :Dept of Production Engineering, Nagano Prefectural Institute of Technology
1.概要(Summary)
Al-CNT複合材は、実用Al合金に比べ、大幅な縦弾性係数の増大と降伏強度および引張強さが向上するが、延性は著しく減少し、実用上の障害となっている。その原因は脆性炭化物Al3C4の形成と成長に起因していると考えられるが、これを阻止・抑制する手段としての熱処理や通常の塑性加工は奏功していない。そこで,著しく強いせん断変形を導入し緻密な組織を形成することができる摩擦撹拌処理の効果は期待できるが、検証されていないので、本研究でその有効性について調べる。
2.実験(Experimental)
Al-CNT複合材は以下のように作製した。市販の5083Al合金の切りくずと昭和電工(株)製VGCF (MWCNT) を所定量秤量して,SUS製ボールミル容器に混入し,三軸方向加振型ボールミル(BM)により混合・複合化処理した。得られたA5083-8mass% MWCNT複合粉末を金型に充填し,グローブボックス内で真空度200Pa以下,焼結温度550℃,加圧応力140MPa,1hr保持を行い,40×35×6 mmの平板加圧焼結試料(Al-CNT複合材)を得た。
5083Al母材に焼結板材を挟み込むためのスペースをつくり,そこに焼結板材を挟み込み固定した上で,摩擦攪拌処理(FSP)した。先端に突起のついた高速回転するツールにより焼結板材にかなり強いせん断応力を導入した。この試料を用いて電子顕微鏡組織観察,引張試験等を行った.
3.結果と考察 (Results and Discussion)
最初に,焼結板材を0.8mm, 1.6mmの厚さに切断し母材とともにFSPする手法の妥当性を検討した。FSP条件の最適化に改善の余地はあるもののAl合金中に強化材であるMWCNTを混合分散することが可能であることが分かった。また,作製した攪拌部組織は母材を超える引張特性を示すとともに,延性の低下は焼結材における延性の低下より改善した。
Fig. 1にEBSD方位マップ像を示す。(a)は母材,(b)は母材をFSP処理した組織,そして(c)は複合材強化FSP組織である。FSPによる組織の微細化は明らかで,複合材添加によるさらなる微細化および微細な炭化物相の存在が示された。CNTの存在形態についてさらに検討を加えていく。
Fig.1 EBSD image showing cross section grain structure: (a) base material, (b) base material after FSP, (c) composite using FSP.
4.その他・特記事項(Others)
信州大学カーボン科学研究所の清水保雄特任教授,また,共同研究者の貝梅正二氏には,研究結果の議論や組織観察について支援を頂いた。記して感謝する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Yoshinao Yazaki, Ryoma Seki, Tomonobu Owa, and Yasuo Shimizu: 日本金属学会・日本鉄鋼協会北陸信越支部 平成28年度連合講演会,平成28年12月3日
6.関連特許(Patent)
なし