利用報告書
課題番号 :S – 19 – SH – 0011
利用形態 :共同研究型支援
利用課題名(日本語) :摩擦攪拌法によるナノ炭素材料強化アルミニウム基複合材料の作製
Program Title (English) :Fabrication of Nano-carbon Reinforced Al Alloy Composite by Friction Stir Processing
利用者名(日本語) :尾和 智信
Username (English) :Tomonobu Owa
所属名(日本語) :長野県工科短期大学校 生産技術科
Affiliation (English) :Dept of Production Engineering, Nagano Pref. Institute of Technology
1.概要(Summary)
本プラットフォーム事業を活用し,摩擦攪拌法 (FSP)によるAl-MWCNT (multi-walled carbon nanotube) 複合材の作製と強化を達成した.本研究では,固相潤滑材として用いられるグラファイトを取り上げる.溶湯法などによりグラファイトをAl合金に添加すると強度・延性が低下する.FSP法では,強い塑性変形を導入し微細組織を形成することができるため,固相複合法としての可能性,有効性について実験・検証する.
2.実験(Experimental)
市販の5083Al合金の切りくずと所定量のフレークグラファイトを原料とし,三軸方向加振型ボールミル(BM)により混合・複合化処理し,5083Al-8%graphite複合粉末を作製した.これを金型に充填し,グローブボックス内で真空度200Pa以下,焼結温度550℃,加圧応力140MPa,1hr保持を行い,真空加圧焼結試料(Al-gr焼結板)を得た.Al母材にAl-gr焼結板を入れるスペースを加工し,1.6mmの厚さにしたAl-gr焼結板を挟み込んで,母材とともにFSP処理し複合材料(攪拌部)を作製した.XRD,EBSD,TEMなどを使用し複合材料の組織特性を調べた.
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Al-gr焼結板を強化材として母材とともにFSPすることで,Al合金中にグラファイトを比較的均一に混合分散することができた.作製した攪拌部は母材を大きく上回る引張強度を示した.破断伸びは母材と比べ大きく低下したが,FSP条件次第では延性を示す複合材料も作製できた.Fig. 1に作製した攪拌部のTEM写真と回折パターンを示す.第1相として母材のAl相,第2相として数十nmサイズの微細な炭化アルミニウムAl4C3が観察された.そして,FESEM観察,EBSD観察なども考え合わせると,FSPによる強化材の均質化の効果が認められるとともに,Al-gr焼結板添加による攪拌部のさらなる微細化の効果が明らかとなった.
Fig.1 TEM micrographs of the composite produced with 1.6mm thick 5083 Al-8% graphite sheet via FSP.
(a) Bright field image, (b) dark field image,
(c) electron diffraction pattern with the phase analysis,
(d) analysis results from diffraction rings.
4.その他・特記事項(Others)
信州大学先鋭材料研究所の清水保雄特任教授および共同研究者の貝梅正二氏には,研究結果の討議や評価手法について的確な指摘を頂いた.記して感謝する.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Tomonobu Owa, Yasuo Shimizu, Shoji Kaiume and Yoshio Hashimoto: Materials Transactions Vol.60, No.6 (2019), pp.1018-1025.
(2) 尾和,清水,貝梅:溶接学会全国大会,2019年9月17日
(3) 田中,尾和,清水,貝梅:日本金属学会・日本鉄鋼協会北陸信越支部連合講演会,2019年11月30日
6.関連特許(Patent)
なし