利用報告書

新奇二次元材料の開発及び構造・電子状態解析
尾崎泰助1), Chi-Cheng Lee2)
1) 東京大学物性研究所, 2) 淡江大学物理学科

課題番号 :S-20-JI-0004
利用形態 :機器利用支援
利用課題名(日本語) :新奇二次元材料の開発及び構造・電子状態解析
Program Title (English) :Theoretical analysis of novel two-dimensional structures
利用者名(日本語) :尾崎泰助1), Chi-Cheng Lee2)
Username (English) :T. Ozaki1), Chi-Cheng Lee2)
所属名(日本語) :1) 東京大学物性研究所, 2) 淡江大学物理学科
Affiliation (English) :1) ISSP, the Univ. of Tokyo, 2) Tamkang University.

1. 概要(Summary )
前年度に引き続き、密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算手法に基づき、金属等の基盤上に成長した新規二次元構造(シリセン及びゲルマネン)の安定構造とその電子状態を系統的に計算し、ZrB2上のGe原子が二重三角格子構造を形成していることが明らかとした。また本構造はフラットバンドを有しており、その物理的起源として二重三角格子構造のハミルトニアンにカゴメ格子のハミルトニアンが埋め込まれていることを明らかとした。さらに強結合模型を用いて、フラットバンドを有する格子を設計する二つの理論的方法を導出した。またフォノン計算におけるダイナミカル行列における行列要素を部分系毎に制御できる手法を開発し、本手法をcuprate構造:La2-xMxCuOに適用し、low-temperature less-orthorhombic (LTLO)構造の存在を示唆する結果を得た。

2.実験(Experimental)
大型計算機hollister上にて第一原理計算を実施した。第一原理計算には本研究グループにて開発を進めているOpenMXを用いた。ZrB2上のGe構造に対して複数の構造モデルを仮定し、密度汎関数理論に基づき構造最適化計算を実施した。得られた最適化構造に対して内殻電子光電子(XPS)スペクトル計算及びバンド計算を実施し、実験との比較を行った。また理論的に導出したフラットバンド格子のバンド計算を実施し、フラットバンドの生成条件を詳細に調べた。さらにcuprate構造:La2-xMxCuOのフォノン計算を実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
構造最適化によって得られた安定構造の生成エネルギーの比較から、最も安定な二次元構造は二重三角格子構造であることが分かった。本構造はZrB2上に第一層でGe原子の三角格子が形成し、さらにその上に長周期のGe原子の三角格子が形成しているユニークな構造である。またXPSスペクトル及びバンド構造を計算し、実験によるXPS及び角度分解光電子スペクトルと比較した。その結果、計算と実験が定量的にも良く一致していることが判明し、実験で得られた構造が二重三角格子構造であることが示唆された。二重三角格子構造のバンド構造はカゴメ格子のそれと良く一致しており、フェルミエネルギー近傍にフラットバンドが現れる。強結合モデルの解析から二重三角格子のバンド構造中にはカゴメ格子の電子構造がハミルトニアンのレベルで埋め込まれていることが明らかとなった。この発見をもとに既存のフラットバンド格子(カゴメ格子やチェッカーボード格子)から出発し、原子サイトの付加もしくは除去により新しいフラットバンド格子を持つ導出する方法を提案した。

4.その他・特記事項(Others)
本研究(の一部)は、科研費(20H00328)の助成を受けて実施されました.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
“Emergence of nearly flat bands through a kagome lattice embedded in an epitaxial two-dimensional Ge layer with a bitriangular structure”, A. Fleurence et al., Phys. Rev. B 102, 201102 (2020).

6.関連特許(Patent)
なし

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