利用報告書

新奇磁気伝導特性を示す窒化物薄膜の磁気特性評価
羽尻哲也, 強博文,浅野秀文
名古屋大学大学院工学研究科

課題番号 :S-19-MS-1099
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新奇磁気伝導特性を示す窒化物薄膜の磁気特性評価
Program Title (English) :Evaluation of magnetic properties of nitride thin films with novel
magnetotransport properties
利用者名(日本語) :羽尻哲也, 強博文,浅野秀文
Username (English) :T. Hajiri, Q. Bowen, H. Asano
所属名(日本語) :名古屋大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Department of Materials Physics, Nagoya University

1.概要(Summary )
カイラリティを有する磁性体はスキルミオンやトポロジカルホール効果など興味深い物性を示す。またそのカイラリティを用いた超高密度磁気デバイス応用への展開も議論されており、基礎物性のみならず応用の観点からも興味深い。我々はこれまでに磁気カイラリティを有すると期待される新奇窒化物薄膜の作成に成功し、新奇磁気伝導特性の観測に成功してきた。しかしながら、多結晶バルク粉末での強磁性キュリー温度が200K程度であるのに対し、我々が作成を行った単相成長した薄膜試料は室温(300 K)においても自発磁化が存在するだけでなく、磁気カイラリティに起因すると考えられる新奇磁気伝導特性の観測に成功してきた。
そこでキュリー温度の決定とキュリー温度の組成依存性・相図作成を目指し、分子科学研究所の高温オプションが利用可能なSQUID型磁化測定装置を利用して、磁化の温度依存性測定を行った。

2.実験(Experimental)
磁化測定はSQUID型磁化測定装置 (Quantum Design社製 MPMS-7)のオーブンオプションを利用して、DCモードおよびRSOモードを利用して300 Kから700 Kの間で実験を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
まずはじめにDCモードを用いた磁化測定を試みた。高温測定オプションを用いる場合、試料サイズの制約が大きいことに加え、対象物質はノンコリニアなスピン配列を有するために磁化が小さく(試料サイズより予想される磁化の大きさは10-6 emuオーダー程度)、検出限界に近いために、明瞭な磁化を得ることが出来なかった。
そこで、より高感度に測定が可能となるRSO測定を試みる事とした。300 Kから700 Kで測定を行った所、我々が名古屋大学で行った2 Kから350 Kの磁化の温度依存性と連続的に繋がる磁化の温度依存性が得られ、600 K近傍にキュリー温度があることを明らかにすることが出来た。
今回の利用では一つの組成の測定しか行うことが出来なかったが、今後は薄膜試料およびその固定方法の改良を行い、様々な組成の磁化測定を行うことで、特異な磁気状態の解明を目指していく。

4.その他・特記事項(Others)
磁化測定は分子科学研究所・機器センターの藤原基靖様の多大なる支援を受けて行うことが出来ました。ここに感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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