利用報告書
課題番号 :S-20-KU-0014
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :新規炭素繊維表面改質手法の開拓
Program Title (English) :Development of the CNT-reinforced CFRP composites
利用者名(日本語) :宇田 暢秀
Username (English) :N. Uda
所属名(日本語) :九州大学工学研究院航空宇宙工学部門
Affiliation (English) :Department of Aeronautics and Astronautics, Kyushu University
1.概要(Summary )
炭素繊維強化プラスチックの更なる高弾性高強度化には炭素繊維と樹脂マトリックスの界面結合強化が必要である。本研究では、新たに開発した反応性表面修飾剤であるポリベンズイミダゾール(PBI)により被覆されたカーボンナノチューブ(CNT)を補強材として用いることを検討した。これまでに九州大学応用化学部門の藤ヶ谷らの研究で、PBIとエポキシ樹脂との反応性によりPBI被覆CNTがエポキシ樹脂と共有結合を形成することを見出している。このPBI処理法によりエポキシ樹脂の高強度化を報告している。本支援によりPBI被覆CNTを供給いただき、炭素繊維への混合および剥離試験を行うことが目的である。これまでのPBI被覆CNT試料はシート状であり、エポキシモノマーへの初期分散に長時間の超音波処理が必要であったため、粉末状のPBI被覆CNTを開発頂いた。昨年度の支援においてCNTとして用いた単層CNTに替えて、分散性に優れる多層CNTを用いてこれまでと同様の試験を行った。
2.実験(Experimental)
既報に従いPBIにより被覆したCNT(PBI被覆CNT)を合成した。CNTとしては日機装製の多層CNTを用いた。合成後の回収には吸引ろ過法にかえて再沈殿法を、また、乾燥法に関してはこれまでの真空加熱乾燥にかえて、凍結乾燥による乾燥を行った。PBI被覆CNTをエポキシ樹脂(jER 807 / jER cure W)に分散し、分散性の向上が見られるかについて検討を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
PBI処理多層CNTを造粒化処理により得た(図1)。エポキシへの分散はホーンタイプ超音波処理5分,バスタイプ超音波処理15分の1セットにより行った。
図1.粉末状PBI被覆CNTの作製法
図2.エポキシ樹脂への分散後の光学顕微鏡
分散の結果、PBI被覆単層CNTと比較し、分散性が向上した(図2)。造粒化処理により加え、多層にした結果、さらに解砕が容易になったと考えられる。さらに剥離試験を行ったところ、初期靭性の大きな向上が得られることが明らかとなった。破断面にはCNTとみられる構造体が見られたことからCNTへの荷重移動が起こり、靭性が向上したものと考えられ、さらなる添加量の増大で初期靭性値のさらなる向上が期待できる。
4.その他・特記事項(Others)
PBI被覆CNTの合成は柿田有理子氏および荒谷弘幸氏に実施頂いた。ここに謝意を示す。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし。
6.関連特許(Patent)
該当なし。