利用報告書

新規発光性材料の開発
大川原 徹
北九州工業高等専門学校

課題番号 :S-15-KU-0008
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :新規発光性材料の開発
Program Title (English) :Development of novel luminescent materials
利用者名(日本語) :大川原 徹
Username (English) :T. Okawara
所属名(日本語) :北九州工業高等専門学校
Affiliation (English) :National Institute of Technology, Kitakyushu College

1.概要(Summary )
ビピロールは複素環化合物の中でも高い発光量子収率で青色発光を示すことから、数多くの研究例が報告されてきている。Cheらはビピロールが固体中で水素結合によって剛直な分子構造となり、凝集状態においても高い発光性を示すことを見出した。また、我々も近年、ビピロールの側鎖に様々なサイズのアルキル基を導入することでその発光波長をコントロールできることを報告した(平成25年度ナノテクノロジープラットフォーム試行的利用の成果として平成26年度に論文発表)[a]。本研究では、従来、青色でしか発光しなかったビピロールの発光をさらに長波長シフトさせ、緑、黄、赤で発光する構造を探索することを目的とし、新規化合物の分子構造を質量分析装置、単結晶X線構造解析装置を用いて明らかにした。

2.実験(Experimental)
発光色のコントロールのためにはKnoevenagel縮合による共役系の伸長を利用した。まず、既知のビピロールに対してアルデヒド基を導入し、次いで酢酸アンモニウム存在下、種々の活性メチレン化合物を反応させた。合成した化合物は質量分析装置を用いて同定した。一部の化合物については単結晶の作成に成功し、それらを単結晶X線構造解析装置によって構造解析を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 得られた化合物1-3のX線結晶構造解析結果を図1に示す。中でも化合物2は末端が環状構造になっており、分子構造に立体的な制約があることで、非常に平面性の高い構造となることが明らかになった。この構造を反映し、化合物は固体においても量子収率12%で赤色発光することを見出した。

図1. 化合物1-3の構造式およびORTEP図

4.その他・特記事項(Others)
(a) T. Okawara, A. Doi, T. Ono, M. Abe, K. Takehara, Y. Hisaeda, S. Matsuishima, Tetrahedron Letters, 2015, 56, 1407-1410.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 大川原徹 他、日本化学会第96春季年会、平成28年3月24日(ポスター発表、講演番号:1PC-119)
(2) 大川原徹 他、日本化学会第96春季年会、平成28年3月25日(口頭B講演、講演番号:2H5-20)
(3) 河野玲緒 他、日本化学会第96春季年会、平成28年3月25日(口頭A講演、講演番号:2H5-31)

6.関連特許(Patent)
該当なし

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