課題番号 ： S-15-MS-1007
利用形態 ： 機器利用
利用課題名（日本語） ： 新規電子供与体を成分とする導電性有機材料の構造と物性に関する研究
Program Title (English) ： Structures and physical properties of organic conducting materials based on novel electron donors
利用者名（日本語） ： 白旗　崇1), 古田圭介1) , 片山翔伍1)
Username (English) ： T. Shirahata1), K. Furuta1), S. Katayama1)
所属名（日本語） ： 1) 愛媛大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) ： 1) Graduate School of Science and Engineering, Ehime University

１．概要（Summary ）
エチレンジオキシ基が置換した電子供与体を成分とする分子性導体は様々な相転移を示す。図1に示す新規電子供与体DMEDO-TS及びDPEO-TTPを用いて新規分子性導体を作製し、その結晶構造・物性を明らかにした。
２．実験（Experimental）
リガク・CCD型極微小結晶用単結晶X線回折装置・MERCURY CCD (CCD-3)
新規分子性導体 (DMEDO-TS)2PF6 の極微小結晶を用いてX線結晶構造解析を行った。吹き付け型の低温装置を利用し、相転移温度の前後で構造解析を行った。また、新規分子性導体 (DPEO-TTP)2XF6 (X = As, Sb) について、結晶構造解析を行った。
SQUID型磁化測定装置 Quantum Design MPMS-XL7
新規分子性導体 (DPEO-TTP)2XF6 (X = As, Sb, Ta) について、極低温での帯磁率を測定し、超伝導相の有無を調査した。
３．結果と考察（Results and Discussion）
(DMEDO-TS)2PF6は50 Kで金属−絶縁体転移と見られる抵抗値の異常がみられる。ヘリウムガス吹き付け型の低温装置を用いて60 K および 12 KにおけるX線結晶構造解析を行った。金属相および絶縁相において、格子変調などの明確な構造の違いが無いことから、50 Kにおける転移はSDWに起因している可能性が高い。今後、SQUID型磁化測定装置を用いて転移機構を明らかにする計画である。
(DPEO-TTP)2XF6 (X = As, Sb) は7 Kまで金属的な振る舞いを示す。X線結晶構造解析の結果、これらの塩には二つの金属相が存在することが明らかとなった（図2）。この構造相転移には柔軟なプロピル基の配座が関与している。SQUID型磁化測定装置を用いて超伝導相の有無を調査したが、2 Kまでの温度領域では超伝導と考えられる磁気転移は観測されなかった。今後は、対イオンのサイズや形状を変えた塩の構造と物性を調べる計画である。

図2. (DPEO-TTP)2SbF6の (a) 高温金属相（273 K）および (b) 低温金属相（100 K）におけるドナー分子配列。

４．その他・特記事項（Others）
謝辞
本研究はJSPS科研費26410095および愛媛大学研究活性化事業の助成を受けた。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) T. Shirahata, S. Kohno, K. Furuta, Y. Oka, Y. Misaki, Bull. Chem. Soc. Jpn., Vol. 88 (2015) p.p.1086–1092.
(2) 岡 優佑, 白旗 崇, 御崎 洋二、2015年日本化学会中国四国支部大会、平成27年11月15日.
(3) 片山 翔伍, 白旗 崇, 御崎 洋二、日本化学会第96春季年会、平成28年3月25日.
６．関連特許（Patent）
なし