利用報告書

新規高分子化合物のキャラクタリゼーション
青嶋 紘
住友化学株式会社

課題番号 :S-15-KU-0022
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :新規高分子化合物のキャラクタリゼーション
Program Title (English) :Characterization of Novel Polymer Compound
利用者名(日本語) :青嶋 紘
Username (English) :H. Aoshima
所属名(日本語) :住友化学株式会社
Affiliation (English) : Sumitomo Chemical Co., Ltd.

1.概要(Summary )
 ポリスチレン(PS)の分子鎖末端に変性基を導入し、末端変性基が固体界面におけるPSの凝集状態に及ぼす影響を「表面・界面分子振動解析装置」を利用し評価した。固体界面における凝集状態は、鎖末端に変性基がある場合と無い場合では異なった。固体界面において、末端変性基が垂直方向に配向することが明らかとなった。

2.実験(Experimental)
 試料として、開始末端にsec-ブチル基、終末端に水素が導入されたPS (PS(H))、開始末端にフェニル基、終末端に-N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)プロピルアミド基が導入されたPS (PS(N))を用いた。各PS膜を石英プリズムおよび石英基板上にスピンコーティング法に基づき調製した。石英プリズム上の膜と石英基板上の膜を貼り合わせ測定用試料とした。試料に、真空下、393 Kで24 h熱処理を施した。本試料中に存在する界面は、石英により挟み込んだため、石英界面のみとみなせる。石英界面におけるPS(H)およびPS(N)の凝集状態を和周波発生(SFG)分光測定により評価した。偏光組み合わせを調整することで界面に対して垂直方向の配向状態に関する情報を得た。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 図1は、各PSのSFGスペクトルである。PS(H)において、2910 cm-1に弱いピークが、3000 ~ 3100 cm-1付近に明確なピークが観測された。2910 cm-1のピークは、sec-ブチル基中のメチレン基のC-H逆対称伸縮振動モード(CH2,as)に帰属される。3000 ~ 3100 cm-1付近のピークは、フェニル基の伸縮振動モード(2)に対応する。これは、側鎖が製膜時の遠心力により石英界面に面内配向したことを示唆している。PS(N)において、2910 cm-1に末端変性基中のメチレン基のC-H逆対称伸縮振動モード(CH2,as)に由来するピークが観測された。また、3000 ~ 3100 cm-1付近にフェニル基の伸縮振動モード(20b、2)に由来するピークが観測された。以上の結果は、PS(N)の場合、側鎖のフェニル基だけでなく末端変性基も石英界面に配向したと考えると説明できる。

図1. 各PSのSFGスペクトル

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
投稿中。

6.関連特許(Patent)
なし。

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