利用報告書

有機および無機複合材料の新規合成法の開発と応用
馬渡康輝, 高瀬舞(室蘭工業大学大学院工学研究科)

課題番号 :S-20-CT0122
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :有機および無機複合材料の新規合成法の開発と応用
Program Title (English) :Development and application of organic and inorganic hybrid materials
利用者名(日本語) :馬渡康輝1), 高瀬舞1)
Username (English) :Y. Mawatari1), M. Takase1)
所属名(日本語) :1) 室蘭工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Muroran Institute of Technology

1.概要(Summary )
新規機能性材料の合成を基盤に研究を推進する場合,これらの合成プロセスが低環境負荷であることがより望ましい。本研究では、有機物を基盤とする高分子材料、および有機無機複合材料を創成することを目的としている。その合成時における環境負荷の低減を目指し、従来溶液反応で合成してきた化合物群の無溶媒メカノケミカル合成を試みた。本支援事業を利用することにより、材料合成の反応条件の最適化をはかった。

2.実験(Experimental)
合成したモノマーのメカノケミカル重合反応は、ステンレス容器の粉砕機を用いて実施した。生成物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー装置(SEC)で測定し、分子構造は溶液NMRで推定した。有機無機複合材料のメカノケミカル合成反応は、希土類塩と有機酸を原料とし、上述の粉砕機で行った。

使用装置:サイズ排除クロマトグラフィー分析システム:島津 CLASS-VP、UV-vis検出器(SPD-10Avp)、RI検出器(RID-10A) (公立千歳科学技術大学登録装置)

3.結果と考察(Results and Discussion)
メカノケミカル反応において、反応時間、原料と触媒との比、反応補助剤の種類およびその添加量を系統的に変えて実施した。重合反応では、反応時間を長くするにつれてモノマー転換率は向上するが、ある時間を境に分子量が低下することが明らかになった。これは、粉砕の衝撃で生じるエネルギーが重合反応を進めると同時に生成したポリマー鎖の切断を生じさせていると考えられる。一方、有機無機複合材料の場合は、反応時間が一定時間以上では生成物の収率が飽和した。
生成したポリマーのNMRスペクトルを比較すると、反応時間が短い場合はモノマー由来のピークが観測された。一方、反応時間が十分に長い場合はモノマー由来のピークは完全に消失し、ポリマー由来のブロードなピークが観測された。さらに、反応時間が長いほどそれらのピークはブロードになることも明らかになった。このことは、反応時間が長くなるほどポリマー鎖が切断されていることを示唆している。

4.その他・特記事項(Others)
<謝辞>
 本測定の実施にあたり、公立千歳科学技術大学の大越研人先生にSECにて分子量を測定して頂いた。
 本研究の一部は、科研費基盤C「有機ハイドライド中の水素貯蔵量の迅速可視化を目指したπ共役らせん高分子の開発」(19K05517)の支援を得て実施した。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
竹谷康平・高瀬舞・馬渡康輝、「液体有機ハイドライド中の水素貯蔵量を可視化する一置換ポリアセチレンの開発」、化学系学協会北海道支部2020年冬季研究発表会

6.関連特許(Patent)
なし

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