利用報告書

有機トランジスタ材料としての応用に向けた新規BTBT誘導体の開発
田原圭志朗1), 芦原優也1)
1) 兵庫県立大学 大学院物質理学研究科

課題番号 :S-19-NR-0030
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :有機トランジスタ材料としての応用に向けた新規BTBT誘導体の開発
Program Title (English) :Research on new BTBT derivatives toward application to organic field–
effect transistor materials
利用者名(日本語) :田原圭志朗1), 芦原優也1)
Username (English) :Keishiro Tahara1), Yuya Ashihara1)
所属名(日本語) :1) 兵庫県立大学 大学院物質理学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Material Science, University of Hyogo

1.概要(Summary )
有機エレクトロニクス分野では、有機半導体が有機分子溶液の塗布によって容易に形成でき、エネルギー、大面積化、コストの点でメリットが大きいことから、これを利用したデバイス開発が盛んに行われている。本研究は、金属錯体を有機薄膜電界効果トランジスタ(OFET)の材料として応用することを目的としている。昨年度は、新たな有機半導体材料をとして、導電性骨格を組み込んだ新規金属錯体を開発した。今年度は、ゲート絶縁膜と有機半導体層の界面に挿入する新たな自己組織化単分子膜(SAM)を開発し、OFETに応用した。本課題では、新規SAM構成分子の同定を実施した。

2.実験(Experimental)
MALDI-Spiral-TOF-MS 新規SAM構成分子の同定のため、質量分析を実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 導電性部位として、有機トランジスタの半導体部位として、高い大気安定性と世界トップレベルの移動度を兼ね備えたbenzothienobenzothiophene (BTBT)に注目した。前年度までに、このBTBTに2つの水酸基を導入した誘導体を配位子として、ビピリジンを補助配位子とした白金錯体を合成した。今回は、補助配位子を単座配位子のジメチルスルホキシド(DMSO)にすることで、白金錯体の置換活性を高め、配位子交換反応を表面での錯形成反応に適用し、ゲート絶縁膜表面にSAMが作製できるかを検討した。
補助配位子にDMSOを用いた新規白金錯体を2段階で合成し、NMRと本課題でMALDI-Spiral-TOF-MS装置を利用した高分解能質量分析で同定を行った。このDMSO錯体が溶液中で、ビピリジンと配位子置換反応することを確認した。さらに、新規錯体の溶液にSiO2熱酸化膜付きシリコン基板を室温で浸漬し、超音波洗浄した後、原子間力顕微鏡、光電子分光法等によって同定したところ、錯体由来のSAMが形成されていることを確認した。さらに、このSAMが有機半導体C8-BTBTの真空蒸着のための良い足場となることを見出した。また、有機半導体層の上部に金電極を形成したデバイスがトランジスタ動作を示すことを確認した。一般的に用いられるシランカップリング剤によってSAM処理したトランジスタに比べ、移動度、閾値の点で性能が向上した。SiO2上のSAMは比較的疎に固定化されており、SiO2上の第一層は、SAMとC8-BTBTが噛み合った構造をしていると考えられる。SAMの電子ドナー性に加え、BTBT骨格が共通するSAMと有機半導体の組み合わせが、電気伝導度の向上に寄与したと考えられる。金属錯体を用いた新たなOFETのデザインに関する知見が得られた。

4.その他・特記事項(Others)
NAISTの技術職員西川嘉子氏および岡島康雄氏に御担当いただいた。料金については、科研費基盤(C) JP16H06514の支援を受けた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 芦原優也,田原圭志朗,角屋智史,池田貴志,小澤芳樹,阿部正明,錯体化学会第69回討論会,令和元年9月23日.

6.関連特許(Patent)
なし

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