利用報告書
課題番号 :S-17-TU-0007
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :有機トランジスタ用超伝導薄膜の膜厚計測
Program Title (English) :Thickness measurement of superconducting film aiming at electrode fabrication for organic field-effect superconducting transistors
利用者名(日本語) :山本浩史
Username (English) :H. Yamamoto
所属名(日本語) :分子科学研究所、協奏分子システム研究センター
Affiliation (English) :Institute for Molecular Science, Center of Integrative Molecular Systems.
検索キーワード :Superconductor, Thickness, X-ray reflectivity
1.概要(Summary )
申請者のグループでは、有機エレクトロニクスの材料として、これまで用いられることの少なかった電荷移動錯体を用いて、超伝導トランジスタを開発・改良することを目的として研究している。現在4端子測定により超伝導転移そのものは観察できているが、デバイスの更なる⾼性能化のためには、配線材料も超伝導化することが必要であり、具体的には窒化ニオブによる配線のパターニングが重要である。しかしながら、窒化ニオブ膜は膜厚により転移温度などが変化するため、作製した薄膜の厚みと、転移挙動との対応関係を押さえておくことが、デバイス開発にとって必須となる。そこで、X線低角反射測定によって、スパッタ成膜した窒化ニオブの膜厚を計測し、所属機関における伝導特性・磁気特性との比較を行うこととした。
2.実験(Experimental)
高出力全自動水平型多目的X線回折装置を用いて、2θ/ωvs 強度の測定を行った。測定波長は1.541867Å、発散角は0.05°である。得られたデータのフィッティングにより窒化ニオブの膜厚を求めたところ、サンプル1、2が37-39nm、サンプル3、4が77-79nm、サンプル5、6が150-170 nmであることが明らかとなった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
窒化ニオブの薄膜は、成膜条件や膜厚によって超伝導の転移温度が低下したり、場合によっては超伝導そのものが消失したりすることが知られている。今回は得られた膜厚の情報を元に、およそ200 nmの膜厚を有する窒化ニオブ膜を、酸化マグネシウム上にスパッタ成膜した。条件は、Ar/15ccm、N2/1.5ccmで4 Paの圧力を保ちながら、300 WのRFスパッタをニオブターゲットに対しておよそ6分間行うというものである。また、スパッタ時に基板の加熱を行ってないものと、600℃の基板加熱を行ったものを用意した。これをSQUIDで磁気測定したところ、後者の600℃基板加熱を行ったもののみ、12ケルビンで超伝導転移を示すことが明らかとなった。また粉末X線の測定を行ったところ、加熱処理を行ったものにおいてのみ、窒化ニオブのブラック反射が確認された。基板加熱による膜厚の減少が心配されたが、今回の高出力全自動水平型多目的X線回折装置による測定では、600℃の加熱による影響はそれほど大きなものではないことが確認された。しかし熱処理を行うことにより、有機材料系の回路に組み込む際の工程が制限されるため、今後は熱処理を極力抑えたスパッタ法の開発が必要である。
4.その他・特記事項(Others)
・測定を担当して頂いた下谷秀和准教授に感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。