利用報告書

有機ビラジカルドープ試料のESR緩和時間測定
鈴木克明, 梶弘典
京都大学化学研究所

課題番号 :S-15-MS-1060
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機ビラジカルドープ試料のESR緩和時間測定
Program Title (English) :ESR relaxation time measurement of organic biradicals doped in organic thin films
利用者名(日本語) :鈴木克明, 梶弘典
Username (English) :Katsuaki Suzuki, Hironori Kaji
所属名(日本語) :京都大学化学研究所
Affiliation (English) :Institute of Cemical Research、Kyoto University.

1.概要(Summary)
Sample Radical Conc.
(wt%) T1f
(μs) T1s
(μs) T2
(ns)
1 btbk 0.5 8.56 78.0 247
2 btbk 2.5 5.10 45.5 179
3 btbk 5.0 3.74 30.9 167
4 Cbtbk 1.73 0.49 541 1694
5 Cbtbk 8.65 8.10 330 801
6 Cbtbk 17.3 14.8 302 637
近年、動的核偏極 (Dynamic Nuclear Polarization: DNP)を利用したNMR測定法が急速に発展してきた。固体DNP-NMR法では、対象サンプルにラジカルを添加し、ラジカル分子の分極をサンプルに移すことにより固体NMR測定の超高感度化を実現している。固体DNP-NMRにおいて、用いるラジカル試料の緩和時間は極めて重要なパラメータである。本研究では、有機薄膜中にビラジカル化合物を分散させた後、パルスESR測定を行い、有機薄膜中におけるビラジカル分子の緩和時間を決定した。
2.実験(Experimental)
薄膜試料は、ビラジカルbtbkあるいはCbtbk (Fig. 1)をP3HT:PC71BMと共にクロロベンゼンに溶解させた後、ドロップキャスト法により作製した。これらの薄膜試料について、分子科学研究所所有のELEXYS -580を用い、スピン-格子緩和時間 (T1)とスピン-スピン緩和時間 (T2)を測定した。T1はInversion Recovery 法を用いて、T2はHahn echoパルスを用いて求めた。測定はX-band, 50 Kにて行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
T1の緩和挙動についてフィッティング解析を行ったところ、btbkとCbtbk共に、二成分の存在が明らかになった(Table 1)。一つは、数μ秒から10数μ秒オーダーの速い緩和(T1f)、もう一つは数十μ秒から数百μ秒に及ぶ遅い緩和(T1s)である。一般に、電子スピンの縦緩和は分子ダイナミクスと交換相互作用に依存するため、T1fは薄膜中におけるビラジカル分子の会合体に由来する緩和、T1sは薄膜中に会合せずに分散しているラジカル分子に由来する緩和と考えられる。いずれのラジカルにおいても二成分が観測されるが、CbtbkのT1sが特に長く、薄膜中に良く分散していることがわかる。これらの結果は、化学研究所にて測定したESRスペクトル測定の結果とよく一致する。また、固体DNP- NMR測定において、ラジカル種の分散性が高く、緩和時間が長いほど感度向上が大きいことが知られており、Cbtbkの方がDNP測定に有利に働くことが示された。以上の結果に基づき、今後、固体DNP-NMR測定を行っていく。
4.その他・特記事項(Others)なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent) なし。

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