利用報告書
課題番号(Application Number):S-16-NR-0050
利用形態(Type of Service):技術代行
利用課題名(日本語) :有機半導体およびナノカーボンへのドーピングと物性に関する研究
Program Title (English) :Study on doping in organic semiconductor and nano carbon materials
利用者名(日本語) :小柴 康子, 石田 謙司
Username (English) : Y. Koshiba, K. Ishida
所属名(日本語) :神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻
Affiliation (English) :Department of Chemical Science and Engineering, Graduate School of Engineering, Kobe University
1.概要(Summary )
次世代の光・電子デバイス創出に向けた新素材、ポテンシャル材料の探索が広く行われる中、合成技術によるHOMO/LUMO調整、柔軟性などの特長から有機半導体が注目されている。一方、イオン液体は室温・常圧下で液体性を示す有機イオン塩であり、その化学的安定性や高イオン伝導性などから“夢の新素材”として研究開発が活発に行われている。しかし、同じ有機系材料に属するこれら新素材を融合し、両素材間の構造的、光・電子機能的相互作用を探求する詳細研究は少ない。本研究では、有機半導体の発光特性、電子準位に対するイオン液体のドーピング効果解明を主な目的とした。
2.実験(Experimental)
利用者らのこれまでの研究において、有機半導体ポリマーへのイオン液体添加により発光輝度の大幅な向上が確認されている1)。イオン液体のドーピングが有機半導体ポリマーの電子準位シフトをもたらしているためであると考え、奈良先端科学技術大学院大学ナノテクプラットフォームにて大気中光電子分光装置AC-3によるイオン化ポテンシャル測定を行った。今回、有機半導体としてはポリフルオレン系発光性高分子(Fig. 1a)、イオン液体にはイミダゾリウム系カチオン-TFSI系アニオンからなる物質(Fig. 1b)を使用した。
Fig. 1. Chemical structure of (a) poly fluorene and (b) ionic liquid.
3.結果と考察(Results and Discussion)
AC-3によるイオン化ポテンシャル測定より、ポリフルオレン単体のHOMOを5.69 eVと定量化した。一方、イオン液体をドーピングしたポリフルオレン膜については、イオン液体の種類にもよるが、およそ5.8 eVと算出され、HOMOの明確なシフトが観測された。
また、紫外可視吸収測定を併せて実施し、吸収端よりバンドギャップを求めた。AC-3で求めたHOMOとバンドギャップよりLUMOを計算することで、イオン液体ドーピング前後のポリフルオレン電子準位変化を定量化した。その結果、イオン液体ドープに伴い、HOMOだけでなく、LUMOのシフトも確認された。
これら電子準位シフトの結果、金属電極の電子準位との整合がとれ、注入障壁が低下したために、有機半導体の発光特性が向上したとの知見を得ることができた。
今後、イオン液体ドープ濃度の最適化や有機半導体層の配向化を行っていく予定である。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
(1) Hasegawa et al., Chem. Lett. 45, 259 (2016).
謝辞
大気中光電子分光装置AC-3によるイオン化ポテンシャル測定は、淺野間文夫 技術職員に測定いただきました。ここに記して謝意を表する次第です。
本研究の一部はJSPS科研費により行われました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
堀家 匠平、小柴 康子、森本 勝大、斎藤 毅、石田 謙司、「ビニル高分子との界面形成に基づくカーボンナノチューブのn型熱電変換特性」、第64回応用物理学会春季学術講演会(2017年3月17日)
6.関連特許(Patent)
なし







