利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1077
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :有機半導体における電子スピン緩和時間計測
Program Title (English) :Electron spin relaxation time measurements of organic semiconductors
利用者名(日本語) :鐘本勝一,
Username (English) : K. Kanemoto
所属名(日本語) : 大阪市立大学
Affiliation (English) :Osaka City University.
1.概要(Summary )
近年、有機半導体についてのスピン流の研究が報告されている。有機物質における利点として、有機物質では小さいスピン軌道相互作用によりスピン緩和時間が無機系物質に比べて長いため、スピンの伝達距離が長くなると期待されている。その一方で、これまでスピン流研究は、超低消費電力情報デバイス実現に向け基礎・応用両面において国内外ともに精力的な研究展開が行われているが、有機半導体に関するスピン流物性はほとんど物性開拓が進んでいない。今後その利点を生かした素子開発の見通しが提示され、合成化学者の参入により最適分子系の開発が進めば、新規有機素子分野としての発展が見込まれる。
本研究では、具体的にスピン流物性の研究で用いられる有機半導体について、そのスピン緩和時間を実測し、スピン流物性との対比を行うことを目的とした。スピン緩和時間は、スピン流の伝達距離と相関があるとされているため、これが明らかになれば、スピン流物性の理解が進展する。以前にも類似課題にて申し込んだが、用いた素子の緩和時間が想定よりも短かったこともあり、緩和時間測定が実現できなかった。今回は、長い緩和時間の素子を準備したのでその測定を行い、目標達成を目指した。
2.実験(Experimental)
実験設備は極低温棟のESR装置E680を使用した。
有機半導体で作成したダイオードをベースに、その発生電流を、E680の実験システムで積算することを目標とした。またパルスESR照射の効果も調べた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
通常有機素子を薄膜で利用した場合は、ESR信号を与えるほどに十分なスピン量がない場合が多い。そのためESR信号を与えるほどに、細い線幅を与える系を用いることが望ましい。その候補として、まずポリアニリンの利用を試みた。前年度とは異なり、線幅が幾分細くなる試料系を準備して測定を試みたが、あいにく、緩和時間測定はできなかった。
次に、別の共役高分子系の試料を準備して測定を行った(試料名は敢えて控えさせていただきたい)。この系では、線幅が約0.8G程度の試料作成に成功した。また、充填試料の量を多くすることで、パルスESRの信号が実際に観測できた。その結果、位相緩和時間が0.8Gの線幅と対応したものが得られ、さらにはその値がスピン格子緩和時間とほぼ同じであることがわかった。さらには、スピン系の不均一性に起因するスピンエコーを与えない均一系であり、運動したスピン系から信号が得られることがわかった。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の実験を実施するにあたって、分子科学研究所機器センターの藤原基靖さん、伊木志成子さん、浅田 瑞枝さんに大変お世話になりました。また、本研究の一部は科研費(No.26620207)の支援の基で行われました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







