利用報告書

有機半導体材料の創生とデバイス応用に関する研究
奥本健二
株式会社奥本研究所

課題番号 :S-20-NR-0008
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :有機半導体材料の創生とデバイス応用に関する研究
Program Title (English) :Research on Creation of Organic Semiconductors and Devices with use of them
利用者名(日本語) :奥本健二
Username (English) :K. Okumoto
所属名(日本語) :株式会社奥本研究所
Affiliation (English) :Okumoto Laboratory Co., Ltd.

1.概要(Summary )
有機ELや有機太陽電池などに代表される有機薄膜デバイスは、柔軟性、軽量性、製造コストに優れており、実用化に向けて活発に研究が行われている。課題である効率や寿命の改善に向けて、有機半導体の材料開発が鍵となっている。
弊社は、有機半導体材料と有機薄膜デバイスの研究開発事業を行っている。具体的には、材料の化学構造の設計と合成、物性評価とデバイス試作を通して、デバイス特性の改善を進めている。
一方、材料の同定と物性評価および薄膜の評価に対しては、弊社内のみでは設備が不足している。そこで、本ナノテクプラットフォーム事業において①核磁気共鳴装置、②MALDI-Spiral-TOF質量分析装置によって合成した化合物を分析することで化合物の同定を行い、③示差走査熱量測定で合成した化合物のガラス転移温度や融点を評価し、④触針式表面段差計により成膜した有機薄膜の膜厚を評価させていただいた。

2.実験(Experimental)
合成・精製した新規な有機半導体を同定するために核磁気共鳴装置(400MHz固体超伝導NMR:JEOL – JNM‐ECX400P)によって、重クロロホルム溶液のプロトンNMRスペクトルを取得した。また、質量分析装置(MALDI-Spiral-TOF質量分析装置、日本電子社製、型番JMS-S3000)によって、分子イオンピークの検出を行った。質量分析は、合成した材料とマトリックスDCTBをテトラヒドロフラン溶媒中で混ぜ合わせ、空気中で乾燥させたサンプルに対して行った。
示差走査熱量測定は、HITACHI – DSC 7000Xにより行い、昇温速度は10℃/min、冷却温度は20℃/minの条件により行った。
さらに新規有機半導体を製膜し、その膜厚を触針式表面段差計(KLA-Tencor,AS-500)で測定を行った。測定は、ガラス基板上に有機物を均一成膜し、線状の剥離を機械的に行い、基板面と膜面の段差を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、弊社で合成した有機半導体材料OLPV03に対して得られた、プロトンNMRチャートである。化学構造と矛盾ないシグナルが観測され、目的物の取得が支持された。

図1. OLPV03の1H-NMRチャート

図2は、質量分析測定の結果得られたマススペクトルである。MALDI-Spiral-TOF質量分析装置によって得られるマススペクトルはノイズが少ない特長があり、これによって目的の分子の構造について有用な情報が得られた。

図2. OLPV03のマススペクトル

次にOLPV03の示差走査熱量測定を行った結果を図3に示す。OLPV03は、融点が228℃であり、ガラス転移温度が147℃と求められた。耐熱性が高く、有機ELや有機太陽電池用の材料として適している。

図3. OLPV03のDSC曲線

次に、この材料を真空蒸着法あるいはスピンコート法によって成膜し、触針式表面段差計によって膜厚を測定した。その結果、図4に示す高さプロファイルが得られ、狙い通り100nm程度の薄膜が形成できていることが確認できた。

図4.  触針式表面段差計の高さプロファイル

現在、合成した材料を用いて太陽電池デバイスを作製して光電変換特性を示すことまで確認できている。今後、同ナノテクプラットフォーム事業の分光感度・内部量子効率測定装置CEP-2000RRなどによって、定量評価を進めていく予定である。

本ナノテクプラットフォーム事業において測定あるいは測定指導をいただいた奈良先端科学技術大学院大学の技術専門職員である淺野間様、西川様、藤原様、小池様に深く感謝申し上げます。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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