利用報告書

有機半導体素子の電子スピン物性
鐘本勝一1)
1) 大阪市立大学大学院理学研究科

課題番号 :S-15-MS-1080
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機半導体素子の電子スピン物性
Program Title (English) :Electron Spin Properties of Organic Semiconductor Devices
利用者名(日本語) :鐘本勝一1),
Username (English) :K. Kanemoto1)
所属名(日本語) :1) 大阪市立大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Osaka City University

1.概要(Summary )
本申請研究では、以下の研究を行うことを目的とした。
(1) 有機FET動作で発生するキャリアのESR
有機FETでは、これまでゲートバイアス操作により、キャリア由来のESR信号が発生することが報告され、素子動作との関係が注目されてきた。本研究では、その発生キャリヤをESRで捉え、さらにはその動的過程の計測を目的とする。特に本年度は、一般的な素子について、その測定システムの構築に重点をおく。
(2) ESRで誘起される電流の計測
これまで有機半導体素子では、ESRと同時に微小な電流変化が観測されることが報告され、そのスピン物性との関連が注目されてきた。本研究では、有機ダイオード、有機LEDに対して、電流検出ESRを実施する。特に、その信号を実際に分子研の装置において検出するための技術開発に重点を置く。

2.実験(Experimental)
実験設備は極低温棟のESR装置E680を使用した。
上記(1)の実験においては、FETについて、電圧印加によって生じるキャリアの信号をE680で直接検出しようと試みた。(2)の実験においては、有機半導体で作成したダイオードをベースに、その発生電流を、E680の実験システムで積算することを目標とした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
まず、(1)に関して、シリコン基板上に有機FET素子を作製し、実際に動作が確認できた素子に対して測定できるように、試料設置技術を確立させた。しかしながら、室温では信号が得られなかった。そのため、低温での測定も試みた結果、5K付近において、キャリヤに起因すると思われる信号の計測に成功した(図1)。しかしながら、一旦キャリヤ信号が生成した後に、ゲート電圧印加を名無くしても信号が残存していたため、トラップキャリヤが発生し、信号として観測されたと考えている。

 続いて、(2)に基づき、有機LEDに対して、電流ESR計測を行ったが、信号の取得には至らなかった。その原因については、まず、分子研のESR装置では、電流検出ESR信号計測の実績がない。そのため、測定系を確認するために、標準試料を準備する必要があり、今後はそのシステムを構築する。その他の理由として、素子が、移動する際に劣化したことが挙げられる。実際、電流電圧特性を、ESR測定前に確認したところ、通常よりもオーミック電流成分が大きいことが確認された。そのため、今後は、劣化を起こさず測定できるシステムを構築し、測定系を完成させる。

4.その他・特記事項(Others)
本研究の実験を実施するにあたって、分子科学研究所機器センターの藤原基靖さんに大変お世話になりました。また、本研究の一部は科研費(No.26620207)の支援の基で行われました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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