利用報告書

有機半導体素子の電子スピン物性評価
鐘本勝一1), 畑中秀人1)
1) 大阪市立大学大学院理学研究科,

課題番号 :S-16-MS-1032
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機半導体素子の電子スピン物性評価
Program Title (English) :Evaluation of electron spin properties of organic semiconductor devices
利用者名(日本語) :鐘本勝一1), 畑中秀人1)
Username (English) :K. Kanemoto1), S. Hatanaka1)
所属名(日本語) :1) 大阪市立大学大学院理学研究科,
Affiliation (English) :1) Osaka City University

1.概要(Summary )
これまで有機半導体素子では、ESRと同時に微小な電流変化が観測されることが報告され、そのスピン物性との関連が注目されてきた。本研究では、有機LEDに対して、電流検出ESRを実施した。特に、その信号を分子研のESR装置において検出するための技術開発に重点を置き、最終的にはパルスESRとの融合も視野に入れて実施した。

2.実験(Experimental)
実験設備は極低温棟のESR装置E680を使用した。
有機半導体で作成したダイオードをベースに、その発生電流を、E680の実験システムで積算することを目標とした。またパルスESR照射の効果も調べた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
有機LEDに対して、電流ESR計測を行った。前年度に行った際には信号が得られなかったが、原因が、準備した素子に起因するのか、測定系に起因するのか明らかではなかった。今回、大阪市大で使用している測定系を準備し、分子研のESRと融合させて測定を行ったところ、スペクトル計測に成功した(図1)。また、その信号は、分子研のESR及び計測系を利用した場合でも可能なことを確認した。

その電流ESR信号を、パルスESR照射の下でも計測した。図1のスペクトル計測した素子に対し、共鳴磁場の中心付近でパルスESR照射による電流計測を行った。その結果が図2である。素子の応答時定数の関係で、信号はsの時間スケールで立ち上がっている。ただちに立ち上がる強い信号は、非共鳴でも観測されたため、磁気共鳴信号ではないと判断した。一方、20sにピークをもつ信号は共鳴磁場付近で観測されたため、パルスESR誘起電流信号であると結論した。このことから、信号の計測に成功したといえる。
一方で、信号計測には成功したものの、素子の安定性が低かったために長期測定はできなかった。その原因については、運搬時に素子が劣化したことが挙げられる。今後安定した計測を実現するには、劣化を起こさず測定できるシステムを構築することが必須である。

4.その他・特記事項(Others)
本研究の実験を実施するにあたって、分子科学研究所機器センターの藤原基靖さんに大変お世話になりました。また、本研究の一部は科研費(No.26620207)の支援の基で行われました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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