利用報告書

有機半導体結晶薄膜の配向性および欠陥構造評価
松井 弘之1)
1) 山形大学 大学院有機材料システム研究科

課題番号 :S-20-JI-0026
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :有機半導体結晶薄膜の配向性および欠陥構造評価
Program Title (English) :Evaluation of orientation and defect structure of organic semiconductor crystal thin films
利用者名(日本語) :松井 弘之1)
Username (English) :H. Matsui1)
所属名(日本語) :1) 山形大学 大学院有機材料システム研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Organic Materials Science, Yamagata University

1. 概要(Summary)
有機半導体薄膜の配向性は、偏光顕微鏡やX線回折などによって調べられているが、欠陥などによる配向の乱れなど局所的な情報を得ることは難しい。透過型電子顕微鏡を用いた観察が望ましいが、有機半導体薄膜が電子線照射に弱いため、照射量を十分に抑える必要がある。これまでに、電子回折を用いて、ポリマーの局所配向を調べた結果を報告している[1]。
近年、STEMモアレフリンジ法は、極めて低い照射量で、局所的な格子ひずみを高い感度で測定できる手法として注目されている[2]。この手法を用いて電子線照射に弱い水分子を含んだ材料などの原子分解能観察も行われている。
本研究では、STEMモアレフリンジ法を用いて、有機半導体結晶薄膜サンプルの配向性や欠陥構造を明らかにすることを試みた。
2.実験(Experimental)
有機半導体薄膜としてTMTES-pentacene薄膜の観察を試みた。
TEM観察用の試料を以下のように作製した。
1.有機半導体(0.1 wt%)をトルエンに溶解。
2.上記の溶液をブレードコート法によりスライドガラスに塗布し、薄膜を作製。
3. 20 wt%のポリアクリル酸水溶液(分子量:5,000)1滴を上記薄膜上に滴下。
4.ホットプレート上で100度、1時間乾燥。
5.カッターナイフなどでポリアクリル酸の塊を剥離。このとき、有機半導体結晶薄膜も一緒に剥離。
6. Cuグリッドを新しいスライドガラスに置き、超純水で少し濡らす。
7.ポリアクリル酸をCuグリッドに置く。濡れているので少し溶けて付着する。
8. Cuグリッドを手に取り、ペトリ皿の超純水にポリアクリル酸を静かに溶かして洗い流す。
9. Cuグリッドを乾燥。
図1は、有機半導体薄膜のTEM像である。電子照射によって、膜が割けたり(左図)、縮んでしまう(右図)様子を観察した。しかしながら、帯状のパターンが見られることため、ある程度の配向性をもつ試料のように見える。しかしながら、電子回折では、配向性を示すような回折スポットを得ることが出来なかった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
今回は、有機半導体薄膜の厚さをいくつか変えた試料について、TEM観察を行ったが、いずれも、偏光顕微鏡では配向性が確認できたにも関わらず、電子回折パターンを得ることはできなかった。今後、この原因を明らかにすることによって、当初の目標を達成していく。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
[1] M. Sasaki, Y. Yamashita, H. Matsui, Y. Oshima and J. Takeya, “Transmission electron diffraction study of a uniaxially-ordered high-mobility polymeric semiconductor”, Microscopy 68, 167–173 (2019).
[2] S. Kim, S. Lee, Y. Oshima, et al., “Scanning moire fringe imaging for quantitative strain mapping in semiconductor devices”, APL102 (2013) 161604.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
特になし

6.関連特許(Patent)
特になし

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