利用報告書

有機試料の物性評価
佐々木基1)
1) 澁谷工業株式会社

課題番号 :S-16-J1-0022
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機試料の物性評価
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :佐々木基1)
Username (English) :M.Sasaki1)
所属名(日本語) :1) 澁谷工業株式会社
Affiliation (English) :1)SHIBUYA KOGYO, Co., Ltd.

1.概要(Summary )
現在自社開発を計画しているセンシング技術に於いて,指定された環境下で,ある種の生体細胞の生死を判定する手法の開発が必要であることが明らかとなった.そこで本申請では,この判定手法の一つとして,ラマン散乱分光法が有効であるかどうかを確かめることを目的として,細胞含有の有機試料のラマンスペクトルが取得可能であるかどうかを測定した.

2.実験(Experimental)
実験には,北陸先端科学技術大学院大学設置のナノテクプラットフォーム登録機器 ラマン散乱分析装置HORIBA-JY T64000を使用した.試料溶液をスライドグラス上に滴下し,水滴メニスカスにレーザー光を照射し,室温でのラマンスペクトルを得た.測定条件は下記のとおりである.
励起光波長:532 nm
励起光強度:10 mW
測定波数領域:500 cm-1 ~ 4000 cm-1

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に得られたラマンスペクトルの一例を示す.
懸念された,添加剤または含有細胞からの蛍光は観測されず,ラマンスペクトルを測定することが出来た.
死細胞が含まれている場合(赤線)は顕著なラマンバンドが観測されないのに対して,生細胞が含まれている場合(黒線)は添加剤由来と考えられる顕著なラマンバンドが観測される.これらのラマンバンドの帰属は,現時点では定かではないが,1658 cm-1のバンドは再現性良く観測されており,ここに注目すれば,ラマン散乱分光法により in vitro で細胞のバイタルを判定できるという可能性が示された.

図1. 有機試料(生細胞,死細胞)のラマンスペクトル

この結果をもとに,添加剤の合成の方針を検討し,新技術の構築に役立てる予定である.

4.その他・特記事項(Others)
本課題は北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科の小矢野幹夫准教授(現 教授)から技術指導を受けました.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.

6.関連特許(Patent)
なし.

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