利用報告書

有機-無機材料中の分子の配向制御
阿南 静佳
九州大学

課題番号 :S-19-KU-0039
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :有機-無機材料中の分子の配向制御
Program Title (English) :Control of the orientation of molecules included in organic/inorganic composite
利用者名(日本語) :阿南 静佳
Username (English) :Shizuka Anan
所属名(日本語) :九州大学
Affiliation (English) :Kyushu University

1.概要(Summary )
液晶は分子の配向状態と流動性を有する状態であるが、その配向方向は液晶自身によってではなく液晶の周囲の環境に依存して変化する。本研究では、規則的なナノサイズの細孔を有する金属-有機構造体(MOF)に着目した。バルクで液晶性を示す分子をMOFの細孔中に包接し、偏光顕微IR測定により分子の配向性の観察を試みた。

2.実験(Experimental)
本研究では、中赤外・遠赤外吸収測定装置(PerkinElmer社製SpotLight400 IR/FTIRイメージングシステム)を用いた透過測定を行い、装置の使用方法に対する支援を行っていただいた。一部の測定では、赤外偏光子を導入した。シアノ基を有するビフェニル系液晶(LC)をMOFの細孔中に導入し(LC/MOF)、顕微IR測定により液晶の内包の確認と分子の配向性を観察した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
シアノ基に由来する2240 cm−1において、マッピングイメージを取得したところ、試料の位置で強く吸収が観測されたことから、LC/MOF中にLCを内包していることが示唆された。また、バルクでは観測されなかった、MOF中の金属イオンへのシアノ基の配位により高波数側シフトしたピークが観測されたことから、一部のLCがMOF中ではバルクとは異なる状態であることが明らかとなった。さらに偏光子を導入し、面内方向における分子の配向を評価した。吸光度に角度依存性が観測されたことから、MOFの細孔中でLCが配向していることが示唆された。また、温度に依存して配向方向や配向度が変化し、バルクで配向性を生じる温度よりも高温においても配向性を生じた。以上より、MOFの細孔中に包接した液晶分子は配向性を示し、MOF中の規則的な配位子や金属イオンの配列に影響され、高温でも配向状態を維持されたと考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
赤外偏光子および加熱装置は、所属研究室から持参して測定した。
共同研究者等(Coauthor):菊池裕嗣(九大先導研)

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1. 阿南静佳, 菊池裕嗣, 2020年液晶学会オンライン, PC10, “規則的な分子配列を有するMOF中でのシアノビフェニル系液晶の配向”, 2020年10月, オンライン.
2. 阿南静佳, 菊池裕嗣, 第101日本化学会春季年会, A07-1am-08, “金属-有機構造体中に包接した液晶の配向変化”, 2021年3月, オンライン

6.関連特許(Patent)
なし

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